文/印南敦史

画像はイメージです。

新聞の購読者数が減ったといわれるようになって久しいが、それでも特定の新聞を購読されている方はいらっしゃることだろう。私もそのひとりで、「新聞の購読をやめてはいけない」という謎の使命感を抱えつつ、それでも毎日届く新聞を読む時間を楽しんでいる。

ところで、新聞を定期購読している人が新聞(朝刊)を読むのに費やす時間は1日あたり25分程度といわれているのだそうだ。

長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれだろうが、脳神経外科医である『最近、「あれ」「それ」が増えてきた人のための 70歳からの脳が老けない新聞の読み方』(石川 久 著、アスコム)の著者は、「ちょっと短い」と感じているようだ。

私はこれまで1万人以上の患者さんの脳を診てきましたが、「新聞」を読んでいる人のほうが認知症の進行がゆるやかだったり、新聞を読んでいない人とくらべて、認知症の発症年齢が高いことに気づきました(本書「はじめに」より)

そこで、無理なく新聞と向き合う時間を増やし、脳活効果を高める方法を模索したのだという。そうやって発見したいくつかの方法を試してみたところ、自然と新聞を読む時間も増え、脳もスッキリしたそうだ。

新聞を読むと、短期記憶力、集中力、注意力、基礎思考力、意欲という「5つの脳力」が鍛えられるらしい。少なからず納得できる話ではないだろうか?

「脳が老けない新聞の読み方」が具体的に紹介されている本書のなかから、2つのポイントをご紹介しよう。

見出しの言葉を手がかりにイメージをふくらませよう

新聞を読む時間がとれないときには、多少のストレスもたまるものだ。しかし意外なことに、見出しを読むだけでも脳は活性化されるようだ。

新聞の見出しというのは、じつによくできています。読者の目を引くように大きな文字が使われ、さらに、工夫を凝らした言葉が使われ、たった10〜20文字を読むだけでどんなことが起こったのかがわかるようになっています。(本書43ページより)

そのため記事を読まなくとも、見出しさえ確認すれば世の中の流れが大まかにわかるようになっているのである。

たとえば、「貿易黒字過去最高 輸出国とのあつれきも」という見出しがつけられていたとすれば、「日本の貿易が好調で利益も上がっているが、輸出国とはギクシャクしているんだな」と想像がつくだろう。

まずは「見出しから記事の内容を想像する」を習慣化してみてください。
見出しだけなら、5〜10分もあればすべて読むことができるはずです。(本書45ページより)

興味のあるキーワード探しで熟読チャレンジ

新聞を読むことが習慣化しているが、一部の情報を拾い読みするだけで終わっているという方もいらっしゃるかもしれない。だが、それではもったいない。しかも「習慣化」は、脳にとっては大敵でもあるという。慣れてしまえば頭を使わず、惰性でこなすようになってしまうからだ。

だからこそ、惰性で新聞を読まず、ふだん読み飛ばしている面も読むほうがいいのだ。

まずはざっと記事に目を走らせ、興味のあるキーワードを見つけたら、その記事をしっかりと読み込んでみよう。その際には、以下のポイントを意識してみるといい。

(1)誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように、を意識しながら読む
(2)記事に登場する人物の「心情」や「背景」を想像する
(3)記事の中に知らない言葉が出てきたときは辞書で調べる
(4)記事にある出来事の結果、「どのようなことが起こるのか」を想像する
(5)自分なりの意見を持つ
(本書49ページより)

これらをこなすと、基礎思考力、短期記憶力、集中力がアップするという。最初はどれかひとつだけでもかまわないが、慣れてきたらいくつか組み合わせるとさらに効果的であるそうだ。

「なんだか大変そうだな」と尻込みするかもしれません。しかし、標準的な新聞記事の文字数は1000文字前後です。1冊の本を読むとなると大変ですが、ひとつの記事は5分もあれば読み終わります。
「5分でできる脳活」と思って、まずは試してみてください。(本書43ページより)

ちなみに著者は、新聞を読み始める前に、脳の血流をよくするために軽く体を動かすことを勧めてもいる。「カカト・つま先の上げ下げ」「ゆっくりと上半身ひねり」など無理のない運動をするだけで、脳が活発に働き、新聞の内容をより深く理解できたり、興味がない記事に対しても好奇心を持ったりできるようになるというのだ。

運動にもなり、脳も活発になるのだとすると、新聞を読むことの効果は予想以上だといえるかもしれない。

『最近、「あれ」「それ」が増えてきた人のための 70歳からの脳が老けない新聞の読み方』
石川 久 著
1650円
アスコム

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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