普段意識せずにしている呼吸ですが、実は一人ひとり違ったクセがあります。
呼吸の際の筋肉の使い方によって、からだがこわばりやすくなったり、ゆるみやすくなったりすることがあります。
今回は正しい呼吸とそのためのストレッチについて解説します。
呼吸は筋肉でおこなわれている
普段あまり意識せずに息をしているように、無意識で自動的に呼吸がおこなわれなければ、人間は生命を維持することができません。
空気(酸素)をからだ(肺)の中に出し入れすることを、呼吸運動ということもあります。呼吸運動は自律神経にコントロールされ、筋肉によっておこなわれています。
呼吸に関わる筋肉には、主に息を吸うときにはたらく吸息筋(きゅうそくきん)と、主に息を吐くときにはたらく呼息筋(こそくきん)に分類することができ、それぞれ以下のようなものがあります。
吸息筋は、吸気筋ともいわれ、胸郭(ろっ骨)をひろげて肺をふくらませるように作用することで、空気を肺に取り込ませます。
呼息筋は、呼気筋ともいわれ、胸郭(ろっ骨)をせばめて肺をすぼませるように作用し、空気を肺から外に出します。
これが呼吸運動の基本的なメカニズムです。
からだがこわばりやすい呼吸のクセ
このように呼吸の基本的なメカニズムは誰でも同じで、自律神経によって自動的にコントロールされているのです。
しかし人間ですから、一人ひとり歩き方にもクセがあるように、呼吸運動にも微妙なクセがあらわれることがあります。
多少のクセは問題ありませんが、人によってはそのクセによって知らず知らずにからだを緊張させ、こわばらせてしまうことがあります。
からだの緊張、こわばりというのは筋肉を固くしてしまうということで、それによって血行が悪くなったり、こり感や痛みをおこしてしまったりすることがあるのです。
悪いクセにはある程度パターンがあります。
一番多いのは、とにかく呼吸が浅くなってしまうクセです。
正常な呼吸は1分間に12~18回なのに対し、浅い呼吸の人は1分間に20回以上呼吸しているといわれます。
また吸い込む空気の量に違いがあり、正常な呼吸では1回あたり約500mlですが、浅い呼吸では約250mlほどになってしまうそうです。
吸った空気の一部は気道にとどまってしまうため、浅い呼吸だと肺に取り込まれる空気の量は正常な呼吸の1/3以下になってしまうとのこと。
呼吸で取り込まれた空気は、肺によって酸素が血液に取り込まれ、体中の細胞に届けられ、脳や臓器、筋肉などが働くエネルギーを生み出します。
しかし呼吸が浅くなると、全身の細胞に十分な酸素が運ばれなくなってしまいますので、さまざまな機能が低下します。
それによってからだがこわばりやすくなってしまうのです。
その他に、息を吸うときに背中や腰に力が入ってしまうパターンや、息を吐くときに首や肩に力が入ってしまうパターもあります。
このクセは簡単にチェックできますので、実際にやってみましょう。
呼吸のクセのチェック
まず仰向けに寝てからだの力を抜き、リラックスして何度か深呼吸をしてみましょう。
そこからなるべくたくさん息を吸い、しっかり吐ききってみてください。
たくさん息を吸おうとしたときに、背中や腰が反って床から浮きそうになっていませんか?
もしそうなっていたら、あなたは背中や腰に力が入りやすいタイプです。このタイプの人は、背中や腰にコリや痛みがおこりやすいです。
次に、しっかり息を吐ききろうとしたときに、肩が床から浮き上がっていませんか?
もしそうなら、あなたは首や肩や胸に力が入りやすいタイプです。このタイプの人は、首や肩にコリや痛みが起こりやすいです。
もしかしたら、吸うときも吐くときも両方力が入ってしまう人がいるかもしれません。そういう方はかなりからだをこわばらせやすいタイプだと思われます。
このように、呼吸をする際に呼吸筋以外を過剰につかって力んでしまうのが、からだをこわばらせる呼吸です。
これは、呼吸筋やろっ骨や背骨などが固くなってしまっていて、充分に呼吸筋が使えなくなっている、働きづらくなっている状態なのです。
そのために、本来呼吸ではあまり使わない外側の筋肉、背中や腰、首肩胸などの筋肉を使わないと十分な呼吸運動ができなくなっていて、それらの筋肉の疲労からからだがこわばりやすくなっていると考えられます。
浅い呼吸もそうなのですが、これは長時間のデスクワークや運動不足、ストレス、睡眠不足などでおこることが多いといわれています。
からだをゆるませる呼吸
からだをゆるませる呼吸というのは、ようするに呼吸筋が充分にはたらく正常な呼吸のことです。
そのためには、呼吸筋やろっ骨、背骨などをほぐしてゆるめることが大切です。
それにはさまざまな方法がありますが、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/)では、次のようなストレッチをおすすめしております。
※ストレッチをする前に、クッションや座布団、丸めた毛布などをご用意ください。ヨガマットをお持ちでしたら、半分ほど丸めた状態で使うとちょうど良いと思います。半円のストレッチポールなどでも大丈夫です。
ストレッチ(1)
背中にクッションを当て、仰向けになります。クッションの大きさは、背中が反って胸が楽に開くぐらいの大きさが良いでしょう。
通常は10~15cmくらいの高さをおすすめしています。
クッションの位置は上の画像のように肩甲骨(わきの下)ぐらいの位置で、両手を横に開きます。この位置に当てることで自然に胸の筋肉や肋間筋、ろっ骨などが開いて動きやすくなります。
そのまま身体の力を抜き、楽に大きく深呼吸をしてください。
背中や腰、首肩は力を入れないようにしながら、なるべくろっ骨を大きく開くように息を吸い、楽に吐いていきます。
自分のからだの胴体部分が丸い円筒型の風船になっているイメージをしてみましょう。
息を吸うときは円筒が太くなるように膨らむイメージ、吐くときは円筒が細くなるようなイメージです。
呼吸をゆっくりと大きく10回から20回ほどおこなってください。
※この姿勢で顎が上がり過ぎてしまったり、頭が床につかなかったりする場合は枕を入れておこなってみましょう。
※首や肩、腰などに痛みやその他症状がある場合、この姿勢をとると症状が悪化することがありますので、注意しておこなうか、またはこのストレッチをおこなわないでください。
ストレッチ(2)
次に、そこから膝を立て、ゆっくりと左右に倒しながら楽に呼吸を続けます。
10回~20回ほどおこなってください。
足だけを左右に倒すのではなく、脇腹あたりから大きくひねるように動かし、ろっ骨が動くようにしてください。
ストレッチ(3)
次に、ストレッチ(2)の状態から片側に膝を倒したままで、ゆっくり大きく深呼吸をします。
この姿勢で深呼吸をすることで、普段あまり動かないろっ骨の部分に息が入って動くような感覚があると良いです。
5回~10回ほどおこなってください。
片側が終わりましたら反対側も同じようにおこないます。
最後にまた(1)の姿勢に戻って脚を伸ばし、楽に深呼吸を繰り返します。
5回~10回おこなってください。
終わったあとはクッションをはずして仰向けになってみましょう。
ストレッチをする前より呼吸が楽になったり、背中や腰が楽になったりする感覚があると良いでしょう。
※このストレッチをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのストレッチ自体ができないようでしたらやめてください。
この記事があなたの腰や脚の痛みを改善する一助になりましたら幸いです。
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腰痛改善ストレッチ ろっ骨をゆるめると腰痛が良くなる【川口陽海の腰痛改善教室 第37回】(https://serai.jp/health/389404)
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文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
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