皆さんは、漢方薬と聞くとどんな印象がありますか? 「苦いけど体によさそう」「葛根湯は知っているけど……」など、「そもそも漢方ってどんなもの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、基本的な漢方に関する疑問や基礎知識を、漢方の専門家にわかりやすく解説してもらいます。 第62回のテーマは、「季節の変わり目の不調に効く漢方」です。あんしん漢方(オンラインAI漢方)の薬剤師、竹田由子さんに教えてもらいました。
季節の変わり目に起こりやすい不調とは?
昔から、季節の変わり目は体調が変化しやすい時期といわれています。とくに、冬から春へ移り変わる季節は、1日のなかでも寒暖差が大きく変化し、体調も崩しがちな時期です。春先は自然界の変化だけでなく人間社会の生活環境も変化するので、肉体と精神の両面に大きなストレスがかかります。
東洋医学では、立春からの数か月を「発陳(はっちん)」といい、古いものを押し出し、新しいものが芽吹く時期とされています。新陳代謝のスピードも上がり、体に大きな変化が起きると、冬に隠れていた持病やアレルギーなどの不調もあらわれやすくなります。
ここからは、冬から春への季節の変わり目に起こりやすい不調について解説し、漢方の治療が有効な症状とおすすめの漢方薬も併せてご紹介します。
1.体がだるい
東洋医学では、春は「肝(かん)」に影響が出やすい時期と考えられています。肝は体に必要不可欠な「気(き)」を巡らせ、「血(けつ)」を貯蔵し、必要に応じて調整する役割があります。
春の陽気の影響で肝気がのぼりすぎると、首からうえに「血」が集まってしまい、「気」「血」のバランスが崩れ、体のだるさやのぼせ、頭痛などを感じるようになります。
2.イライラする
感情が不安定になりイライラする、すぐに落ち込んでしまうといった自律神経の不安定は、「気」が滞ることによって起きます。
また、春は卒業や入学、就職や転勤など、生活環境や人間関係にも変化が起きる時期です。生活環境の大きな変化がストレスとなり、自律神経に負担をかけていることもあります。
3.不眠になる
肝の不調による自律神経の乱れは、寝つきの悪さや眠りが浅くなる原因になります。慢性的な睡眠不足の原因にもなり、昼間に眠くなったり、ぼーっとしたりなど、集中力にも影響を及ぼします。
4.食欲が減る
「肝」の不調は、飲食物の消化吸収に関わる「脾(ひ)」の活動を抑制することにもつながるので、食欲減退や消化不良などが起きやすくなります。春先の食欲不振は梅雨や初夏を乗り切る体力も奪ってしまいます。
季節の変わり目の不調を和らげる漢方
冬から春への季節の移り変わりの時期の不調は、気候の変化による寒暖差からなる、ホルモンバランスの乱れや自律神経の乱れが原因と考えられています。
症状を緩和するためには、
・気分の落ち込みを改善する
・イライラを鎮める
その他にも根本から改善するために、
・血流をよくして自律神経の乱れを整える
・消化・吸収機能を改善して体の内側から心を元気にする
といった作用のある漢方薬が選ばれます。
漢方薬で心と体全体のバランスを整えると、季節の変わり目でも健康な体を手に入れることができます。
ここからは、季節の変わり目の不調を和らげる漢方薬を紹介します。それぞれの漢方の効能や、どんな人におすすめかも含めて解説します。
1.だるさや全身の倦怠感には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
補中益気湯は疲労倦怠感のあるときに用いる漢方薬としても有名で、自律神経の乱れに伴う「気」を補い、胃腸を整えるはたらきを持ちます。全身に疲労感や倦怠感がある人に向いている他、疲れすぎて眠れない、寝汗などがある場合や、最近では免疫力強化にも用いられることがあります。
2.イライラや神経の高ぶりには抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
“肝(精神)の高ぶりを抑える”と書く通り、抑肝散加陳皮半夏はイライラや怒りを鎮めます。「血」を補い「気」を巡らせることで自律神経を安定させ、精神状態を落ち着かせる作用があります。また、半夏や陳皮は胃腸症状がある場合にも有効です。更年期や月経前のイライラなど、女性ホルモンの変動による不調にもよく用いられます。
3.不眠や神経過敏には酸棗仁湯(さんそうにんとう)
不眠症の代表薬で、自律神経の乱れによって夜間目が覚めて寝られない、熟眠感がない、精神不安、神経過敏の人に用いられます。比較的体力が低下していて、心身の疲労がたまっている場合に処方されます。抗ストレス作用や中枢抑制作用があり、どの年代にも用いられます。
4.食欲不振には四逆散(しぎゃくさん)
ストレスや精神的な緊張などからみぞおちがつかえたり、胃がキリキリ傷んで食欲がなく、胃炎や胃酸過多など胃腸が弱っている状態に用いられる漢方薬です。いらだちや情緒不安定など、精神神経症状にも用いられます。一方、食欲不振に不安や不眠などを伴う場合は、帰脾湯(きひとう)がよいでしょう。
漢方は体質との相性で正しく選ぼう
漢方薬でもっとも重要なのは、体質と症状を見極め、それに合った漢方薬を処方してもらうことです。漢方では、体質や症状のあらわれ方を示す「証(しょう)」や、不調の原因を探る「気・血・水」という基準で処方を決定します。
この証の決定や処方がしっかりしていなければ、いくらいい漢方薬を使っても効果が出ないどころか、思わぬ副作用が起こる場合もあります。
漢方薬は、自己判断をせず、漢方を基礎から学んだ医師や薬剤師などのプロにおまかせするのがいちばんです。
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春先の不調は「肝」がポイント
冬から春にかけての季節の変わり目は、肉体・精神ともに大きなストレスにさらされる時期で、寒暖差や生活環境の変化が大きな影響を与えます。とくに、「肝」の不調による自律神経の変化には気をつけましょう。
さて、次回は「新生活のストレスを和らげる漢方」です。ぜひご覧ください!
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