文/印南敦史

100歳以上の老人が世界でもっとも多く、「島内に寝たきりの老人がいない」イタリアのサルディーニャ島の百寿者。

そして、旧石器時代と変わらぬライフスタイルを維持し、心臓病が皆無に近い南米ボリビアのチマネ族。

これらは、『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』(鈴木 祐 著、かんき出版)の冒頭で紹介されている“常識を超えた若さ”を保ち続ける人々だ。にわかには信じられないような話だが、そんな人たちが存在するのである。

本書の目的は、彼らのライフスタイルを参考にしつつ、科学の観点からアンチエイジング(抗老化)の要点を学ぼうということ。

いわば、サルディーニャ島の百寿者のように人生を楽しむための下地をつくることを目指しているのである。

もちろん老いは避けられないことだが、ここ十数年でヒトの老化に対する理解が格段に進んだため、外面と内面をともに若く保つためのポイントが明らかになってきたという。

執筆にあたっては、1970年代から現在までに発表された抗老化の文献から、GRADEシステムなどにもとづいて質が高いものを抽出し、およそ3000超のデータを参考にしました。と同時に、UCLAやハーバードといった期間の専門家に意見を求め、科学的な妥当性と効果のバランスが良いテクニックを選び抜きました。(本書「まえがき」より引用)

したがって、古今東西のアンチエイジング法からもっとも信頼できる手法だけを集めた「ベスト盤」のようなものだと著者は表現している。

「メンタル」「睡眠」「美肌」などなど、さまざまなカテゴリーに分けられているところも魅力のひとつ。まずは、気になるところから読んでみることもできるわけだ。

今回は、「運動」のなかから「ウォーキング」に焦点を当てみたい。

いうまでもなくウォーキングは、手軽さと効果とのバランスがとてもよいエクササイズ。そのメリットを立証したデータも多いが、特に精度の高さから著者が注目しているのは、ハーバード大学などによる2019年の論文だ。

運動量と死亡率との関係について、研究チームが3万6383人分ものデータをもとに「メタ分析」を行ったもの。メタ分析とは過去のデータをまとめて大きな結論を出す手法なので、科学的な証拠としては非常に信頼性が高いという。

分析の結果は、次のようなものだったそうだ。

・ウォーキングなどの軽い運動をよく行う人は、まったく運動をしないグループに比べて死亡率が62%低くなる
・座ってばかりで体をほぼ動かさない人は、ウォーキングなどの軽い運動を行う人に比べて死亡率が263%アップする。特に座りっぱなしの時間が1日12時間以上の人は死亡率が292%高くなる。(本書73〜74ページより引用)

驚くべき数字だが、だからこそ気になるのは「1日にどのくらい歩くと、どのようなメリットを得られるのか」ということではないだろうか。その点に関するガイドラインは、次のようになる。

・最低限の肉体維持は1日8分(本書74ページより引用)

49歳以上の男女1564人を対象にした調査で、普段の活動に1日8分のやや早足のウォーキングを毎日行うと、高齢になっても充分な肉体機能を維持できるとの結果が出ているという。

・メンタルの改善を狙うなら1日10分(本書74ページより引用)

3万3908人を11年追跡したデータによると、毎日10分前後のウォーキングで、メンタルが落ち込むリスクは12%減るのだとか。

・早期死亡を防ぐなら1日20分(本書74ページより引用)

アメリカ国立がん研究所からは、1日のウォーキングが20分を超えたあたりから早期死亡率が減り始め、1日100分で効果が最大化するとの報告が。

・脳機能をシャープに保つなら1日40分(本書74ページより引用)

2010年のメタ分析では、1日40分のウォーキングを週に3回行うことで、高齢者の認知機能が改善することがわかった。

・死亡リスクを減らすなら1日60分(本書75ページより引用)

先のハーバードによるメタ分析により、1日60分のウォーキングで、体を動かさない人より死亡率が40%低くなる傾向が確認されたという。

このように、1日のウォーキング時間が長くなるほど体は若返るようだ。しかし費用対効果を考えれば、1日あたり20〜30分を目指すのが現実的。このレベルのウォーキングを週に5回ずつ、40日間続けられるようにしたいと著者は提案している。

* * *

なお、ここに示されているガイドラインは大半が「観察研究(人為的、能動的な介入を伴わず、ただその場に起きていることや起きたこと、あるいはこれから起きることを見る研究方法)」をもとにしているため、厳密にコントロールされた実験ほど精度は高くないそうだ。

あくまで「大まかな目安」だということだが、とはいえ、その効果が決して小さくないことは想像に難くないだろう。なにしろ、ウォーキングが健康の基本であることは、誰にも否定しようのない事実なのだから。

『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』

鈴木 祐 著
かんき出版

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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