皆さんは、漢方薬と聞くとどんな印象がありますか? 「苦いけど体によさそう」「葛根湯は知っているけど……」など、「そもそも漢方ってどんなもの? 」と思っている方も多いのではないでしょうか。
そんな基本的な漢方に関する疑問や基礎知識を、漢方の専門家にわかりやすく解説してもらいます。第28回のテーマは、「体質傾向別(8)腎陽虚って?」です。あんしん漢方(オンラインAI漢方)の薬剤師、竹田由子さんに教えてもらいました。
腎陽虚(じんようきょ)とは?
腎臓は血液をろ過し、尿を作る器官です。しかし、漢方医学における「腎」とは、西洋医学でいう腎臓とは少し異なります。漢方医学における腎は、腎臓以外に、ホルモンを調整する内分泌系、尿を作って排出する泌尿、子どもを産むための生殖器系、免疫系、中枢神経系の一部の機能が関わっていると考えます。
腎にある精気を「腎気」と呼び、さらにその腎気は体のエネルギーの元になる「腎陽」と、体に潤いを与える「腎陰」にわかれます。どちらにも偏らず、バランスがとれていることが大事で、腎陽が不足すると「腎陽虚」、腎虚が不足すると「腎陰虚」と呼ばれる状態になります。
腎陽虚は様々な不調の原因になり、生活にも影響が出やすい体質です。続いては、具体的に腎陽虚の症状について見ていきましょう。
腎陽虚に見られる症状
腎陽虚は、とくに下半身に症状が出やすい体質です。足腰が重だるく、力が入りにくくなります。手足が冷え、腰や関節が痛むようになるほか、トイレにも頻繁に行きたくなり、夜中にも目が覚めてしまいます。尿は色がなく透明に近い薄い色で、量は少なめですが回数が多くなり、残尿感も強くなるのです。
顔は青白くなり、ややむくみが目立ち、めまいや耳鳴りなどの症状が起きる場合もあります。女性の場合は、月経痛や月経不順、不妊症、男性の場合はED(勃起不全)の原因になります。
腎陽虚になってしまうのはどうして?
腎陽虚の原因は、加齢と体の冷えです。老化は避けられないものですが、冷えは普段の生活習慣が原因になっている場合が多く、改善すれば腎陽虚体質の原因をひとつとり除けます。
とくに夏場は、冷たいものの飲みすぎや、エアコンの風に長時間当たることは避け、設定温度を必要以上に下げないようにしましょう。また、おなかや腰、足先をきちんと温めることも大事です。常に体を冷やさないように心がけてください。
腎陽虚の改善におすすめの漢方薬
腎陽虚の場合、寒がりにも関わらず飲食は冷たいものを好む傾向にあります。
腎陽虚の改善には、滋養に効果のある地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)、むくみをとる沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、牛膝(ごしつ)、車前子(しゃぜんし)、冷えを改善する桂皮(けいひ)、附子(ぶし)などの生薬が配合された漢方薬がおすすめです。以下に腎陽虚に適した漢方薬を2つご紹介します。
腎陽虚に悩む方におすすめの漢方薬
八味地黄丸(はちみじおうがん):腎の働きが低下することによる症状を改善する漢方薬で、体力があまりない高齢者にも向いています。頻尿や排尿困難、むくみのほか、腰痛や下肢の痛み、しびれに用いられます。冷えが目立ち、とくに下半身が冷たくなっている場合にも適しています。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):体の「水(すい)」の停滞による冷えを改善する働きを持ちます。水分代謝をよくし、尿量の減少や排尿困難を改善します。また、腰痛や下肢のむくみ、しびれに用います。八味地黄丸と同様に、高齢者にも適しています。
漢方薬は、症状と体質に合わせて選択することが重要です。効き目を素早く感じられるだけでなく、体質からの改善も目指せます。逆に、体に合った漢方薬でなければ、効き目が感じられなかったり、まったく効果が出なかったりする場合もあります。
西洋薬に比べ漢方薬は副作用のリスクは少ないものの、適切な服用でなければ副作用が起きる可能性もあります。そこで重要なのが、専門家による適切な処方です。漢方のプロである医師や薬剤師なら、豊富な漢方医学の知識を元に、最適な漢方薬を選択してくれます。
近年では、オンラインで利用可能な「あんしん漢方」というサービスも注目を集めています。スマホでも簡単に利用できるネットの漢方薬サービスで、相談から処方、漢方薬の購入、郵送に至るまですべてネットで完結できます。
体質は日々変化していくものです。「あんしん漢方」では、漢方ドクターがきちんとあなたの体の変化を考慮しながら、その時々に最善な漢方薬を処方してくれます。
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腎陽虚は冷えに注意して生活から改善しよう!
腎陽虚は、腎のバランスの崩れによって、頻尿やむくみ、下半身の冷えなどが起きる体質です。原因は加齢や体の冷えで、生活習慣から見直すことが大事です。また、漢方薬を用いることで体を温め、低下した腎の機能を改善できます。
「体質だから」とあきらめずに、まずは毎日の生活から変えていきましょう。
さて、次回は「漢方薬の歴史(1)伝来〜編纂」です。ぜひご覧ください!
<この記事を書いた人>
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