血液が細胞の材料の運び屋

分解された栄養成分は、小腸の粘膜から体内に吸収され、肝臓へと運ばれていきます。そして肝臓から血液中にとり込まれます。血液は、心臓というポンプによって毎分約5リットルが勢いよく送り出され全身をめぐります。その血流にのって、栄養成分がからだのすみずみにまで配達されるのです。

血のめぐりというのはとても合理的に機能していて、細胞をつくるための材料や新鮮な酸素を届けると、代わりにいらなくなった古い細胞のカスや二酸化炭素を回収して肺に持ち帰ります。

血流が悪くなると、栄養がうまく全身に運ばれず、老廃物がたまりやすくなります。そうすると肩こりや関節痛が起きたり、肌の不調が表れたり、やがては動脈硬化、脳梗塞などにまでつながるのです。私たちにとって、いかに血流が大事なのかがよくわかりますね。

皮膚の細胞の製造工場は、基底層だと話しました。その基底層に、細胞の材料である栄養成分を最後に渡すのは、全身に網の目のように張りめぐらされている毛細血管です。

このように、私たちが食べたものは、胃や腸で分解されながら吸収されて、肝臓に運ばれ、細胞の栄養として使えるサイズになって、皮下に張りめぐらされた毛細血管を通じて供給されます。

このメカニズムを知ると、質のいい皮膚の細胞をつくり続けるためには、毎日の食事で良質な栄養を十分にとる必要があるというのも、納得です。

毎日の食事で良質な栄養をしっかり摂取できていれば、きれいな肌をつくる材料がそろっているので、肌コンディションもよくなります。反対に、栄養が不足したり、肌のためによくない食事が続いたりすると、健康な肌細胞の再生がとどこおり、皮膚トラブルの原因になります。

皮膚のターンオーバーを促して、いつまでも若々しさを保つキーポイントは、やはり食べもの。そして食べものの栄養がしっかりと消化されて届けられること。どんなに高価な化粧品やクリームを使っても、美容治療を受けても、土台になる細胞がうまくつくれなければ、台なしです。

質のいい食事をしっかりとり、生活リズムを整え、きちんと消化吸収して細胞を正しく生まれ変わらせる。それが、からだも肌も若々しく保つカギです。


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工藤あき(くどう・あき)
消化器内科医・美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献する一方、腸内細菌・腸内フローラに精通。腸活× 菌活を活かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。また「植物由来で内面から美しく」をモットーに、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。NHK「ひるまえほっと」などに出演。著書には『体が整う水曜日の漢方』( 大和書房)などがある。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれている。2児の母。日本消化器内視鏡学会専門医。日本消化器病学会・日本肥満学会・日本高血圧学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本内科学会認定医。

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