写真はイメージです。

文・五本木基邦

※前回の【『サライ』編集者の新型コロナウイルス後遺症回復記】1はこちらです。https://serai.jp/health/1048166

「体がだるい」「何もしたくない」といった倦怠感や、「疲れやすい」「においがわからない」といった症状は一進一退のようでいて、1週間を振り返ってみれば改善している。時間はかかっても、「3歩進んで2歩下がる」を続けていれば、そのうちなんとかなるだろう、と思っていた。人生において根拠のない予測はだいたい外れるものだが……。後遺症の経過はどうだろうか。

復帰第4週(発症から6週目)
台風とともに、強烈な疲労感が襲来

ゆっくりと回復に向かっている感覚はあるものの、回復のペースは落ちているように思うのは前週同様。ただ「状況に慣れた」のだろう。どこか、まあこんなもんだろうと思っている自分がいる。

闘病中に約2.5kg減った体重は2kgほど戻った。

が、しかし、体脂肪率は20%から23%へと上昇。減少分は筋肉、増加分は脂肪として計算すると数値がぴったり合うのが恐ろしい。やはり体は動かしていないとダメだなと痛感した。

倦怠感は消えないが、体の疲れやすさはかなり軽減したので、先週からリハビリ的に週1〜2回をメドに自転車通勤を再開している。

と、ここまでは順調、想定の範囲だった。ところが。

台風が関東地方に接近した日のこと。強まる雨の中、取材に出かけた。日時変更不可のインタビュー、2時間ほどがっつり聞くと、得も言われぬ疲労感にとらわれて、終了後はそうそうに自宅へと直帰。夕方5時前から倒れ込むように眠った。夕食のとき以外、泥のように眠っていた。

翌日も起き上がれず、ほぼ一日を横になって過ごす。ダルい。一気に倦怠感がぶり返していた。そのまた次の日もごろごろして何もせず(できず)……。週末なのが幸いだった。

ペースが鈍っていたとはいえ、じわじわと回復傾向が続いていたのに、今さら強烈な疲労感の襲来である。

新型コロナの症状と同様、後遺症も一筋縄ではいかないようだ。

復帰第5週(発症から7週目)
漢方薬の処方を変更

ダルくて何もできない週末を過ごし、月曜になってようやく倦怠感はありながらも、なんとか在宅で仕事ができるレベルまで戻った。

渡辺医師に報告すると「順調に自然軽快すると思っていましたが、思いのほか長引いていますね。慢性疲労症候群と程度の差こそあれ、本質的には同じ現象が脳内で起きているのかもしれません」とのこと。

新型コロナウイルス感染後に社会復帰が困難な人の後遺症として、慢性疲労症候群の可能性が取り沙汰されている。

「原因にはウイルス持続感染の可能性だの、免疫系のバランスの崩れだの諸説ありますが、はっきりしたことはわかりません。五本木さんの場合、仕事はできているので、慢性疲労症候群とまではいかないと思いますが、回復を早めるために補中益気湯を送りますので、届いたら飲み始めてください」と渡辺医師のメールにあった。

「補中益気湯」は発熱が治まって、回復傾向にあったときに飲んでいた漢方薬である。

あのときは咳がひどかったので「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」との組み合わせで処方されていたが、今回は「補中益気湯」のみ。さらに免疫力の底上げを図る生薬のカプセルも送られてきた。

免疫が暴走すると、自分の体を攻撃する自己免疫疾患(膠原病とか)を引き起こすこともあるから、強ければいい、高ければいいという訳ではない。漢方が得意とする、免疫や発熱機構などの生体防御能をバランスをとりつつ最大限に発揮させてくれることを、期待しながら煎じて飲む。

渡辺医師から症状や経過を確認する電話がかかってきたとき、こんな言葉が。

「嗅覚・味覚も順調に短期間で戻ると高をくくっていたのですが……。早めに治ってもらえるよう全力で取り組みますよ。大塚医院の威信がかかってますから」

威信を損なわないよう頑張ります。

復帰第6週(発症から8週目)
2回目のワクチン接種を受ける

「補中益気湯」が奏功しているのか、先週末の異様な体のダルさは軽快している。毎朝、漢方薬を煎じて飲むというルーティーンも、「養生している」という感覚があって穏やかな気持ちをもたらしている(ような気がする)。

渡辺医師によると「漢方薬は患者さんの証(体質や症状のパターン)に合っていると美味しく感じる」とのこと。「補中益気湯」は美味とまでは言わないが、木の根や草の根の複雑な滋味や甘みを感じながら飲んでいる。

補中益気湯を煎じたあと。10種の生薬が配合されている。

味覚は以前と変わらないくらいに回復したように思う。嗅覚はまだちょっと怪しい。

体調が少し戻ってきたタイミングで、2回目のワクチン接種となった。

以前にも触れた通り、発症したのが2回目のワクチン接種の前日で、接種の予約をキャンセルしていた。まさか「キャンセルするような不届き者に打つワクチンはない!」というわけではあるまいが、一度キャンセルしたら、ぜんぜん予約が取れなくなっていた。

新たな感染者は減少して、緊急事態宣言は解除されていたものの、「第6波」に備えおきたくて、予約サイトをこまめに覗いてみるのだが、まったく空きがない。

1か月近くそんな状況だったのだが、先週、ふと見ると近所の会場で空きがあり、予約が取れてしまった。

渡辺医師に「受けても大丈夫ですか?」とメールで伺いを立てたところ、「打っていいと思います。後遺症の症状も取れやすくなります」との返答。なんとも耳よりな話で、勇んで接種を受けた。

1回目の副反応は腕の痛み程度だったが、今回はもう少し本格的だった。

当日の夕方から37度台の発熱があり、夜に37.8度まで上昇。翌日も半日ほど37度台で、倦怠感が強い。そして腕の痛み。でも、そんなものだった。

先週末の異様なダルさには及ばない。まったくもって許容範囲である(個人の感想です)。翌日はスケジュールを空けていたから、問題なし。

体調の悪い時を基準にすれば、かなり回復しているような気もするし、感染以前と比べればまだまだのようにも思う。

体調の記憶なんか曖昧なものだ。だが、自転車通勤にかかる時間がはっきりと増加している。以前は52~54分だったのに、今は57~60分。10%以上落ちている。無理なく55分を切れるあたりを、回復の目安にした。

【『サライ』編集者の新型コロナウイルス後遺症回復記】3に続きます。


 

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