文/印南敦史

『長生きしたい人は歯周病を治しなさい』(天野敦雄 著、文春新書)の著者によれば、私たちの口のなかには直腸のなかと同じくらい細菌が多いのだそうだ。バクテリアという無数の細菌が棲みつき、“細菌叢(さいきんそう)”と呼ばれるひとつの社会をつくっているというのである。

そういった現実は、日常生活ではなかなか意識する機会がないものでもあるだろう。だが、日ごろからしっかり歯を磨いたり、舌をキレイにしたりするなどのケアをしていないと、バクテリアの数はさらに増えてしまうわけだ。

これと同じように、多くの人たちはまた、口のなかにある病気を放置していることに気づかないまま生活をしています。
それが歯周病です。(本書「【序章】歯周病は国民病だ」より)

CMなどでよく聞く歯周病についても、なかなか自分ごととして捉えにくいかもしれない。歯周病菌によって歯を失うリスクがあるのだといわれても、「それは高齢者の話で、まだ自分には関係ない」などと感じてしまいがちだからだ。

しかし、その時点ですでに病気が進んでいることに本人が気づかず、治療されないまま放置されていることも少なくないわけである。

歯周病は習慣の積み重ねが引き金になる生活習慣病

歯周病のきっかけは、「歯のみがき残し」というとてもありふれたものです。ですから、高齢者だけがなるわけではなく、子どもから大人まで誰でもかかります。
毎日歯磨きをしている人でも、歯ブラシが届いていない場所があったり、みがき足りていない場所があったりすれば、その人の口のなかは、歯周病菌がよろこぶ環境をつくってしまっていることになるのです。(本書「【序章】歯周病は国民病だ」より)

つまり歯周病は、毎日の習慣の積み重ねが引き金になる生活習慣病だと考えることもできそうなのだ。

だとすれば、歯周病対策について知っておきたいところ。著者によれば、毎日の歯みがきに必要なのは、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使うケアだ。

歯間ブラシやデンタルフロスも取り入れてケアを

まず、歯みがきは、歯ブラシの毛先を歯と歯の間にしっかり入れるみがき方を覚えてください。よくイラストよる図解で、歯みがきの方法が紹介されていますが、読んで知るのと、実際に実技で教えてもらうのとでは、理解度やコツのつかみ方がまったく違います。自己流ではなく、ぜひ一度、歯科でプロから歯のみがき方を教えてもらってください。(本書151ページより)

歯と歯の間は、歯ブラシではうまくみがくことができない。そこで狭い部分にはデンタルフロスを、歯ぐきの根元には歯間ブラシを使うことが望ましいのだ。

40歳を過ぎたら歯間ブラシを使うべきだというが、大切なことはもうひとつある。食後に爪楊枝を使うようになったら、歯間ブラシでのケアが必要になったと考えたほうがいいというのである。これはわかりやすいポイントかもしれない。

なお歯間ブラシにはいろいろなサイズがあるので、自分の口のなかの状態に合うものを選ぶことが大切。大きなサイズのブラシを無理やり歯の間に押し込むようにして使うと、歯茎が痩せてしまうので注意しなければならないのだ。そのため、やや小ぶりなものを使うほうが歯ぐきのケアにはいい。

なお、使用後の歯ブラシや歯間ブラシには歯周病菌が付着しているので、水でよく洗い流し、水気をしっかり切って保管することが大切。水分を含んだままだと雑菌も繁殖しやすくなるため、キッチンペーパーなどで軽く抑えてからしまいたいところだ。

歯ブラシ交換の目安は、3週間から1か月。毛先が開いてくる前に、新しいものに取り替えるのがよさそうだ。

ちなみに当然のことながら、家族や恋人など近しい間柄であったとしても、歯ブラシの共用は避けるべき。間柄がどうであれ、歯周病は感染症だからだ。

歯磨き粉は洗った歯ブラシで取るので、それほど神経質のなる必要はないが、気になるのであれば歯磨き粉も個別にするといいかもしれない(ただし、歯磨き粉の共用で歯周病菌の感染リスクが上がるというデータは、これまでのところ出ていないようだ)。

歯科で受ける定期メンテナンスは、三〜四カ月に一度を目安に、衛生士さんに丁寧にプラークを除去してもらってください。(本書152ページより)

著者が外来で患者さんにそう伝えると、ほとんどの人が「いや、毎日ちゃんと磨いてるよ」と答えるのだという。ところが、セルフケアで口内の汚れを100%きれいに取り除けている人は、100人に1人もいないのだとか。

どこかに必ずみがき残しがあるわけで、だとすればそこには365日ずっと歯ブラシが届いていないことになる。その部分に関しては歯みがきをしていないも同然なので、歯科でのメンテナンスが重要な意味を持つのだ。

歯周病は、みがき残しのプラークが溜まることではじまります。ですから、歯科で定期的に口のなかをまんべんなく掃除してもらわない限り、完全にみがき残しを取り除くことはむずかしいと思ってください。(本書152〜153ページより)

時間をかけて歯みがきをすると気分もスッキリするが、とはいえそれで完璧だとはいい切れない。セルフケアではどうにもならないところを、プロケアで補うという「ダブルケア」で口のなかをキレイにキープすべきなのだ。

『長生きしたい人は歯周病を治しなさい』

天野敦雄 著
文春新書

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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