文/印南敦史

近視を軽くみてはいけない

電子機器の普及に伴い、近視になる人が世界的に増えているのだそうだ。つまりは環境の変化に目の機能が順応しきれていないということで、充分に理解できる話ではある。

だが現実的に近視に危機感を抱いている人は少ないのではないだろうか?  なぜなら近視には、「単に遠くが見えづらいだけのこと」だというような印象があるからだ。

だが、『眼科医だけが 知っている 一生視力を 失わない 50の習慣』(平松 類 著、SB新書)の著者は、決して近視を侮ってはいけないと警鐘を鳴らす。近視の人は、そうでない人にくらべて「白内障」「緑内障」「網膜剥離」「近視性黄斑症」にかかるリスクが高くなることがわかっているというのだ。

つまり、近視は「遠くが見えないだけ」の不具合ではなく、将来的には失明につながる疾病を招きかねないという非常に恐ろしいものなのです。「近視は現代病だから仕方ない」と片付けられるものではありません。(本書「はじめに」より)

これは意外な、そしてショッキングな話だが、専門知識を持たない私たちにはこうした“知られざる真実”を知る機会が少ない。そこで本書では、“眼科医は理解しているが、一般的に誤解されがちな50の習慣”を紹介している。

視力がいいから健康とは限らない

著者は“世の中の多くの人が陥っている誤解”として、「視力がいいから、私の目は健康」だという認識を挙げている。たしかに、視力がよければなんとなく安心できるだろう。だが実際のところ、視力の高さは目の健康にあまり関係がないというのである。

「どれだけ遠くが見えるか」という視力は、「100mを何秒で走れるか」ということと同様に、身体能力のひとつにすぎないというのだ。

たとえ2.0の視力がある人でも、目のケアを怠れば目の病気になり、悪くすれば失明しかねません。要は「視力がいいから、健康」とはいえない。もっといえば失明する直前まで1.0ほどは見えていた、というケースも多く見られます。(本書50ページより)

たとえば日本人の失明原因1位の緑内障、2位の糖尿病網膜症、3位の網膜色素変性、4位の加齢黄斑変性(加齢によって黄斑に老廃物が溜まりやすくなり、視力が落ちる病気)は、すべて徐々に目の健康が失われていく。しかしその間、視力はあまり落ちない。末期に近くなってから、急激に視力が落ちるわけだ。

もし、視力検査で視力は高いといわれたけれども、「見えづらい」と感じているとしたら、疑うべきは「視野の狭まり」「実用視力の低下」「調整機能不全(いわゆるスマホ老眼)です。(本書52ページより)

通常、眼科で行われる視力検査では、「像の真ん中がどのくらい見えているのか?」を測定する。真ん中がよく見えていれば、「視力は高い」という判断になるということだ。

ところが、緑内障や網膜色素変性など視野が欠ける病気では、真ん中はしっかり見えているのに、周辺はよく見えていない。

真ん中はよく見えているので視力は「1.0」などと高く出るものの、実生活では歩くのに苦労したり、視覚障害者用の白い杖が必要だったりする場合があるということ。これが「視野の狭まり」である。

また、「どれくらいよく見えるのか」は常に一定ではない。視力検査では1.0という結果でも、ある時点では0.8、あるいは0.7というように、視力は1日の時間帯や目の使い方によって変化する。こういった、視力検査のときではなく、日常生活のなかでどれくらい見えているのかを「実用視力」と呼ぶ。

さらに目は、近くを見るときには近くにピントを合わせ、遠くを見るときには遠くにピントを合わせるというように常に調整を行っている。これがうまくできなくなっている状態が「調整機能不全」だ。

なお調整機能不全に関しては、現代人に欠かせないツールが悪影響を与えているようだ。

スマホの見過ぎは目の調整機能不全の原因に

「スマホ老眼」と呼ばれていることからもわかるように、調整機能不全の一大要因と考えられているのはスマートフォンです。(本書55ページより)

手元が見えにくくなるなどの特徴はあるものの、症状の程度はさまざま。したがって無自覚な人も多いようだ。「そういえば、なんとなく見えづらいな」というくらい、ぼんやりとした目の不調だということである。

なお、調整機能は自分で簡単にチェエックすることもできる。しばらく手元を見てからパッと遠くを見て、しばらく遠くを見てからパッと手元を見る、という動作を行うのだ。

このとき、瞬時にピントが合わなかったら、調整能力が下がっている可能性がある。その場合には、調整機能を測る検査を行っている眼科を訪ねてみるのもいいかもしれない。

* * *

本書で紹介されているのは、科学的な裏づけのあるものを主とした、誰でも何歳からでも始められる“ほんの小さな習慣”。著者自身も取り入れているので、自信を持って紹介できるそうだ。「一生よく見える目」を手に入れ、失わないために、参考にしてみてはいかがだろうか?

『眼科医だけが知っている一生視力を 失わない 50の習慣』

平松 類 著
SB新書

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

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