内閣府の調査によると、「孤独死」は年間3万人にも及ぶとされています。これは、1日に約80人が孤独死により亡くなっている計算です。そこで孤独死の現状をご説明するにあたり、まずは著者が所属する「おおさか法務事務所」がある大阪府の現状をご紹介した上で、「孤独死」にならないための対策方法を解説したいと思います。

目次
孤独死の現状
コロナ禍の今
高齢者みまもりサービスの種類
孤独死対策おすすめのアプリ
自治体の孤立防止対策例
まとめ

孤独死の現状

大阪府警の調査によると、大阪府内で「孤独死」により亡くなった人の数が2019年の1年間で2,996人にも上ることが明らかになりました。これは、大阪府警検視調査課の調査により、病院で死亡するなどの「自然死」に該当しなかった1万2,309人について、ご遺体の状態や発見時の状況から確認したものです。その上で「孤独死」に当てはまると考えられるケースを算定しています。詳細は以下の通りです。

・亡くなってから1か月以上経過してから見つかったケース382件
・世代ごとの内訳
  80代 ― 19.1%(572人)
  70代 ― 34.3%(1,029人)
  60代 ― 22.8%(684人)
  50代 ― 13.1%(392人)
・孤独死をした人の7割以上が高齢者
・2,996人のうち性別でみると、男性の数は女性の約3倍の結果に
  男性:2,213人
  女性: 783人

なお、「孤独死」の法律上の定義は、現状ありません。2019年の大阪府警の調査では、「孤独死」の定義を「事件性がなく、誰にも看取られることなく屋内で死亡し、死後2日以上経過してから発見されること」としています。

コロナ禍の今

「孤独死」はコロナ禍でさらに深刻に。 新型コロナによって、人と人との接触の機会が減り、地域の見守り活動なども難しくなったことなどから、長い間遺体が見つけられないままになってしまうケースが多くなっています。

特に外出自粛が長引いたことで、一人暮らしの高齢者が体調を崩すケースが目立っています。家に閉じこもりがちになり、運動不足で持病が悪化、人と会話ができないストレスから、不眠や食欲不振に。感染拡大以降、こうした不調に悩む高齢者は増加しています。一人暮らしの高齢者は増加の一途を辿っている一方で、頼りにできる家族や友人が近くにいない人も多く、地域の見守り機能を再構築することも喫緊の課題です。

高齢者みまもりサービスの種類

離れて暮らしていると、親・親族の健康状態が心配でも、すぐに見にいくことができません。そんな家族にかわって安否を確かめ、異常があれば連絡してくれるのが高齢者の見守りサービスです。見守りサービスは、主に4つのタイプがあります。

訪問型

訪問型高齢者見守りサービスとは、スタッフが定期的に利用者の住まいを訪れ、生活や安否を確認するものです。

メリット:対面でコミュニケーションをとるので、孤独感を軽減できます。

デメリット:利用者が面倒に感じることもあります。サービス内容によって違いはありますが、訪問頻度が高くない場合、緊急対応が難しくなります。

カメラ型

カメラ型高齢者見守りサービスとは、住まいにカメラを設置して目視で健康状態などを確認するものです。

メリット:24時間365日、利用者の現状を把握でき、カメラを通じての会話も可能です。警備会社との契約によるものであれば、緊急駆けつけといったサポートも受けられるものもあります。

デメリット:いつも見られていることから、プライバシーに関わり、利用者の精神的な負担が想定されます。月々の費用負担も考慮に入れておきましょう。

センサー型

センサー型高齢者見守りサービスとは、住まいに設置したセンサーが利用者の状況を感知し、長時間反応がなければ家族に連絡が入るというものです。比較的動ける高齢者向けのケア付きマンションなどでも広く使われており、お手洗いなどの生活に欠かせない場所にセンサーが付けられています。

メリット:利用者のライフスタイルを考慮した見守りを行えます。こちらも、警備会社による駆け付けサポートを受けられるものもあります。

デメリット:カメラ撮影をしていないため、状況を直ちに目視することはできません。

配食型

配食型高齢者見守りサービスとは、スタッフが食事を宅配する際に、会話を通じて利用者の健康状態をチェックするものです。企業だけでなく、自治体や社会福祉協議会など、様々な団体が提供しています。

例えば、兵庫県西宮市の社会福祉協議会香櫨園地区ボランティアセンターでは、地元の方向けに毎週月曜のお昼時間に合わせてお弁当を届けるサービスを1回400円で提供しています。低価格で栄養バランスを考慮したお弁当とコミュニケーションをとるサービスは地元の方にとても喜ばれています。

メリット:食事の用意や栄養制限についての負担がなくなります。こちらのサービスには利用者との会話も含まれています。

デメリット:食事の好みが合わない場合があることやコストが大きい場合も。サービスの提供頻度によっては、緊急時に間に合わない恐れもあります。

孤独死対策アプリ

孤独死対策おすすめのアプリ

緊急時に気づいてもらうためにおすすめのアプリを3つご紹介します。

機械が苦手な高齢者も楽々! 特別な操作は不要の「みまもりアプリ」

▷Peaceful Line-安否確認アプリ-(遺品整理プログレス)
https://www.ihinseiri-progress.com/app/
料金:無料 ※ただし、緊急駆けつけの利用は有料

ポイント:スマホを触っているかどうかで、緊急時かどうかを判別するものです。使用しているスマホにアプリを入れるだけで、特段操作は必要ありません。GPSで位置を確認できたり、トーク機能で家族へメッセージを送ることができます。

▷つながりほっとサポート(NTTドコモ)
https://www.nttdocomo.co.jp/service/tsunagari_hotto_support/
料金:無料

ポイント:使い方は、アプリを登録して普段通りスマホを利用するだけです。スマホの利用状況を確認し、サーバーが自動で指定した家族に(つながりメンバー)お知らせメールを送信します。

利用者1人に対して5~10人まで(らくらくスマートフォン・らくらくホンかで異なる)通知が可能です。また、らくらくスマートフォンなら、利用者が自分で体調をメモすることができるので、家族は安否状態だけでなく、体調も把握することができます。

注意:ドコモの利用者限定のサービスです。家族が他社のスマートフォンを使っている場合は一度確認してから導入しましょう。

操作をする必要はあるが、使いこなせたら便利! 「多機能アプリ」

▷ラクホン(システムアドバンス)
https://www.rakuhon.jp/index.html
料金:無料

ポイント:様々なスマホに対応した、見守りアプリです。特筆すべきは、写真機能。気になる事案を共有したいときに手軽に撮れてすぐご家族に送信できる便利さがあります。LINEなどでも機能はありますが、操作に不慣れな方には難しいという声もあり、その点を改善しているアプリです。

使用していないタブレットやスマホを活用できる

▷みまもりLite(インタープロ)
https://www.mimamori.jp/function/
料金:無料

ポイント:家にWiFi環境が必要です。家の決まった場所に配置し、外出などのボタンを操作したり健康状態を選んでもらう機能があるため、状況をすぐに把握できます。スマホの充電を忘れがちな方にも安心の置き型タイプ。カーテンの開け閉めや家の明るさを感知して教えてくれます。

緊急ボタンがあり、非常時に登録されたご家族のスマホなどへ通知をすることも可能。センサー機能があり、動体検知データをしっかり記録・通知してくれます。無料でもできることの多いアプリです。なお、高齢者だけでなく、お留守番をする子供の見守りも同時にできます。

デメリット:使用できる端末に制限があり(iPhoneは不可)、常に充電器につないでおく必要があります。設置を高齢者自身にゆだねるとうまくいかないケースもあるため、必ず家族・関係者が丁寧に説明しながら導入することが重要です。使用する機能によっては、有料になります。

ここまでアプリの紹介をしてきました。高齢者がスマホを使うには、依然として高いハードルがあります。ですから、導入を検討する際には、使えるかどうか、誰に連絡できるものを選ぶか、緊急時にどう動くか、またはどんな専門家や企業連携のアプリを使うかを検討し、一番合うものを選ぶのが良いと思います。

自治体の孤立防止対策例

厚生労働省では、高齢者の社会的孤立への対策として、2008年「高齢者が一人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議」を開催し、孤立死を予防できる地域社会づくりへの取り組みに向けた提言が行われています。

内閣府は2011年に「社会的包摂政策」を推進し、社会的孤立問題に対応する「一人ひとりを包摂する社会」特命チームを設置。高齢者の社会的孤立に関する問題をはじめ、国民の中に潜む社会的排除の解消に向けた取り組みを進めていました。

しかし、こうした政府の試みには課題があります。政策が断続的なものにとどまっており、体系的にまとまっていないため、実際には大きな防止効果を生みだせていないのが現状です。

まとめ

世界の先陣を切って超高齢化社会を迎えた日本、それと歩調を合わせるかのように孤独死する高齢者も年々増え続けています。

ここまで孤独死対策として高齢者見守りサービスやアプリもご紹介して参りました。しかし、人として本当に大切なことは、自分が最期を迎えるその瞬間まで社会と関わり続け、お互いがお互いを気遣い、助け合える世の中になれば、孤独死の問題はほぼほぼ解決するのではないかと常々考えております。

他人に関心を持たない無縁社会では、この先も孤独死は増え続けてしまいます。そうならないためにも、お互いを支え合う世の中になってほしいですね。そんな世の中を取り戻すために、筆者が取り組んでいる成年後見や家族信託、遺言などの法務を軸とした財産管理業務を通じて社会のお役に立ちたいと強く思っております。

●構成・編集/内藤知夏(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

●取材協力/坂西 涼(さかにし りょう)

sakanishi

司法書士法人おおさか法務事務所 後見信託センター長/司法書士
東京・大阪を中心に、シニア向けに成年後見や家族信託、遺言などの法務を軸とした財産管理業務専門チームを結成するリーガルファームの、成年後見部門の役員司法書士。
「法人で後見人を務める」という長期に安定したサポートの提唱を草分け的存在としてスタート、
全国でも類をみない延べ450名以上の認知症関連のサポート実績がある。認知症の方々のリアルな生活と、多業種連携による社会的支援のニーズを、様々な機会で発信している。日経相続・事業承継セミナー、介護医療業界向けの研修会など、講師も多く担当。

司法書士法人おおさか法務事務所(http://olao.jp

 

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