新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
血圧やコレステロール値はその変化に注目!
50歳あたりから、健康診断でコレステロール値や血圧の上昇を指摘される人が増えます。コレステロール値や血圧が高いと、それだけで命取りになる心臓疾患や脳疾患にかかるかのように脅されたりもします。
健康診断などで両者の古い「基準値」を示されながら、あれこれ指摘される方も多いと思いますが、私はそんな古い基準に従う必要はないと思っています。
コレステロールについては、今も新しいことがどんどんわかってきています。これまでLDLとHDLを、それぞれ悪玉と善玉と表現し、LDL値は低いほどいいと考えられ、高い場合は薬で下げることも行われてきました。
しかし、どうやらそんな単純なものではないようです。
最新の研究では、心筋梗塞など心臓血管障害の直接の原因は、LDL値が高いことではなく、組織の炎症であることがわかっています。その炎症を修復するためにLDLが増えているのであって、すなわちLDLは組織の修復に必要なものと言えます。
それを薬で下げてしまうのは危険だと私は考えています。
上の血圧の目安は、「年齢+90」くらいが適切
一方で、血圧はどうでしょう。血圧の基準値は何度か見直しがなされ、そのたびに厳しくなっていきました。そして、そのたびに「高血圧患者」が大量に生まれ、降圧剤がものすごく売れるのです。
現在、上(収縮期)の血圧がWHO(世界保健機関)の基準で140、アメリカ心臓学会の基準で130を超えれば高血圧と判断されますが、それは厳しすぎ。
私は、上の血圧の目安は、「年齢+90」くらいが適切と考えています。60歳の人ならば「60+90」で150までをOKとしていいでしょう。
さほど高くもない血圧を、無理に薬で下げるとどうなるか。血流が低下します。もちろん、脳の血流も低下します。
しかし、脳の健康を保つために、血流低下は問題が大きいのです。
血圧の基準が厳しくなって降圧剤を飲む人が増えたことで、たしかに脳溢血の患者さんは減りました。一方で、脳梗塞の患者さんは増えています。つまり、脳の血管は切れにくくなっても、逆に詰まりやすくなっていると推測されます。
また、脳の血流が悪くなることで視力の低下も招きます。
思考力も落ちてぼーっとします。実際に、私の患者さんを見ていても、血圧は基準値より少し高めくらいの人のほうが、いきいきと若々しい印象があります。
もちろん、高過ぎる血圧はさまざまな病気を呼びます。上の血圧が180を超えるようであれば放置してはなりません。
家で血圧を測るのはいい習慣
そういう意味でも、家で血圧を測るのはいい習慣です。
朝起きてトイレに行った後と、夜寝る前の2回測れたら理想です。
このときに、「厳しい基準をクリアしないと」と思うと、それだけで緊張して余計に血圧は上がってしまいます。「ちょっと高いくらいなら気にする必要もないんだ」と思えばリラックスできるでしょう。
なお、朝晩両方の時間帯に測ると、たいていの人は朝の血圧のほうが高いことに気づくはずです。朝は活動を始めるために交感神経が優位になるので、血圧も上がるのは当然のことです。
ところが、とくに働き盛りの年代では、夜のほうが高い人がときどきいます。日中のストレスが強く、夜になっても興奮状態に置かれたままで、副交感神経が優位にならないのだと思われます。
コレステロール値や血圧について、古い基準値と比べて右往左往することはありません。大事なのは自分の数値の変化の度合いです。
自分自身でしっかり向き合っていきましょう。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。