くしゃみや咳をすると腰に痛みが走ったり、女性の場合腰痛はなくても尿もれをしてしまったりすることがありませんか?
実はこれは同じ原因、体幹インナーマッスルが弱くなって起こる症状です。
先日SNSで
『腰痛の時にくしゃみをする場合は片手でいいので手を壁につけると振動がそちらに逃げるので腰へのダメージが軽減される』
という話がバズっていました。
いいねは5.6万件、RTは2.5万件以上もついていましたので、それだけ腰痛に困り、共感される方が多いということでしょうか。その数にあらためて驚きます。
この方法は非常に効果があるので、同じような症状がある方はぜひ試してください。
他にも、テーブルなどの家具に手をついたり、電車やバスならポールにつかまったり、杖をお持ちなら杖をついたりといったことも効果があるというコメントがありました。
また座っている時ならば、両手を膝について衝撃に耐えるというのも効果的です。
実は筆者も以前くしゃみをした拍子にギクッとなり、動けなくなったことがあります。
痛みも辛いのですが、くしゃみ程度で腰を痛めるというのがショックで、非常に情けない気持ちになった覚えがあります。
また女性の場合、くしゃみで痛みは起こらなくても尿もれをしてしまうことがあります。
このような尿もれを【腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence; SUI)】といいますが、労作事、または運動時、もしくは、くしゃみ、または咳の際などに意図せず起こる尿もれのことをいいます。
実はこの2つは同じ原因でおこるのです。
くしゃみや咳で腰痛が起こる原因はインナーマッスルの機能低下
くしゃみの衝撃というのは非常に強いのですが、健康な方は腰に痛みが走ったりはしません。
痛みが起こる方と起こらない方の違いはいったい何でしょうか?
その違いは『体幹インナーマッスル』がうまく機能しているかいないかの差です。
体幹インナーマッスルとは、本連載ではお馴染みですが、腹横筋、骨盤底筋などの腹圧を高めて腰や背骨や骨盤などを支える働きをする筋肉のことです。
くしゃみで腰に痛みが走る場合、とくに腹横筋が弱り、うまく働かなくなっているケースが見受けられます。
腹横筋(ふくおうきん)は、腹直筋、いわゆる腹筋の下(奥)にある筋肉で、上図右のように肋骨と骨盤の間を広く覆うような筋肉です。
ちょうど腰痛ベルトやコルセットのような形をしていますが、それも当然。
そもそも腰痛ベルトはこの腹横筋の機能を代替する目的で使用されるものですから同じ形をしているのです。
この筋肉が働くと、コルセットのように腹部が締まって腹圧が高まり、体幹を内側からの圧力でも支えることができます。
つまり人体にはもともとお腹にコルセットがあるのに、うまく使えなくなってしまうことで腰痛がおこるのです。
そして骨盤底筋も、文字どおり骨盤の底(下)から上に向かって圧力を加えることができる筋肉です。
このことで腹横筋などと協働して腹圧を高め、体幹や背骨や骨盤を支える働きがあります。
またそれとともに骨盤底筋にはもう一つ大事な働きがあります。
それは骨盤内臓器を下から支え、尿道や肛門を締めて排尿、排便のコントロールする役割です。
したがって骨盤底筋が弱ってしまうとうまく尿道を締めることができなくなってしまいますので、少し腹圧がかかると尿が漏れてしまうということになるのです。
体幹のインナーマッスルについて、詳しくは以下のページをご覧ください。
腰痛・坐骨神経痛を改善する体幹インナーマッスルトレーニング
(https://www.re-studio.jp/backpain/pg124.html)
くしゃみや咳で痛みをおこさない簡単な方法
冒頭で、くしゃみの際には壁などに手をついて痛みを防ぐ方法をご紹介しましたが、周囲に何もない時はどうしたら良いでしょうか?
簡単で効果的な方法があります。
それは、くしゃみや咳をする一瞬前にお腹や肛門を締めることです。
これによって腹横筋や骨盤底筋に力が入り、腹圧によって腰をくしゃみの衝撃から守ることができます。
「そんな瞬間的に力を入れられないよ~」と思うかもしれません。
しかし皆さんくしゃみや咳をする際に、手を口や鼻に持っていって覆ったりしませんか?しますよね?
このようにくしゃみの一瞬前に行動をすることは十分に可能ですから、この時にお腹や肛門を締めればよいのです。
インナーマッスルを使えるようにトレーニングする方法
そうは言っても、そもそも腰痛の方はこれらのインナーマッスルがうまく働かなくなってしまっていますので、トレーニングで使い方を練習する必要があります。
筆者の腰痛トレーニング研究所では、次のようなトレーニングを指導し、腹横筋や骨盤底筋などの体幹インナーマッスルを使えるようにしていきます。
以下を参考におこなってみてください。
※画像では専用のポールに乗っておこなっていますが、床に寝たままおこなっても同じような効果があります。
1.床にあおむけになり両膝を立てた姿勢をとります。
2.そこから腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切っていきます。
この時に、おへその下あたり(下腹部)をへこますようにしながら息を吐いていきます。
下腹部をへこますように息を吐くことで、腹横筋に力が入るようになります。
息を吸うのは軽く、吐くときはお腹の底からしっかりと吐き切るようにしましょう。
3.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める
2ができたら、今度は下腹部(腹横筋)と肛門(骨盤底筋)を同時に締める練習をします。
腹式呼吸で息を吐き切りながら、下腹と肛門を同時に締めるように力を入れてみましょう。
うまくしっかり吐き切りながら肛門を締められると、下腹部に強く力が入り、固くなるのがわかります。
またこの時に背中や腰や脚は力を抜いてください。
背中や腰や脚に力が入ってしまうと、かえって痛みを起こしやすくなりますので注意してください。
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
恥骨を引き上げるとは、みぞおちの方に向けて腹筋で引き上げるようにすること(下画像オレンジ矢印)です。
すると骨盤は後傾方向に回転します(黄色矢印)。
こうすることでさらに腹圧が高まりやすくなり、腰を守る姿勢をとりやすくなります。
これらのトレーニングを1日30回を目標におこなってみましょう。
いっぺんに30回でも構いませんし、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。トータルで30回が目安です。
30回以上できるようなら、やればやるほど効果は出ます。
しかし、腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みを起こすことがありますので、その点はご注意ください。
また効果が出てくるまでには少し時間がかかります。2週間から1か月程度は根気よくトレーニングを続けてください。
このトレーニングをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
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文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html