文/小林弘幸

「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。

【小林式処方箋】ダラダラを目的化する。

「サザエさん症候群」の原因

あなたの「休日」です。どうぞ自分自身の休日をお過ごしください。ダラダラ過ごしたって、ひたすらSNSやゲームをしていたって、それで構いません。

ただ、先のスマホ依存の話と同じですが、ここで注意しておきたいのは、

「ああ、俺はなんて無駄な1日を過ごしてしまったんだ……」

と後悔しないことです。

なぜなら、「ダラダラ過ごしたことを後悔し、嫌な気分になること」で、自律神経が乱れてしまうからです。嫌な気分で1日を終えると、自律神経のバランスを崩したまま、就寝することになります。当然、睡眠の質は下がり、疲労が抜け切れないまま、月曜日が始まる、ということになりかねません。仕事のパフォーマンスは落ち、そのことを引きずってまた次の日も……と、悪循環が続いてしまいます。

ではどうしたら、気分良くダラダラできるのでしょうか。

それは「ダラダラする」ことを目的化してしまえばいいのです。

「今日1日、ダラダラしよう」

こう決めてしまえばいい。すると、「ダラダラする」ことが目的なわけですから、ダラダラした1日を終えたとしても、目的が達成されたことで、それほど悔いがありません。

さらに絶対に後悔しないようにするためには、「ゆるやかな計画性」を持つことです。ほんのちょっとだけ、アクションを計画するのです。

例えば、「明日は昼まで寝て、午後、ちょっと買い物に行こう」でもいいのです。「今日は朝から晩まで、ゲーム三昧だ!」でもいい。「30分間だけ部屋を掃除して、あとはダラける」でもいい。

「予定通りのダラダラした日」を終えれば、後悔どころか、達成感を覚えます。こうすると、いい気分のまま睡眠できますので、睡眠の質も上がり、翌朝のコンディションも整っているでしょう。

さらに、自身のコンディションを整えたいのなら、「平日と休日は同じ」という感覚を持っていたほうがいいでしょう。

「サザエさん症候群」という言葉がありますよね? 実は私も、気づかないうちに罹ってしまっていたことがあるのですが、日曜の夕方になると憂鬱になり、下手をすると倦怠感や体調不良に繋がる症状を指します。欧米圏にも「ブルー・マンデー」という言葉があり、仕事が始まる憂鬱な月曜日のことを、こう呼びます。

オンとオフのバランスを変えない

ではなぜ「サザエさん症候群」になってしまうかというと、休日に休みモードに入りすぎることがひとつの原因だと考えられます。なぜならば、休息をとりすぎると、副交感神経が上がりすぎてしまい、モチベーションが下がってしまうのです。最も自律神経のバランスを崩しやすいのは、「行動しすぎて疲れるのが嫌だから、休日は行動を控える」というパターンだと思ってください。

私が考える「休日の過ごし方3原則」です。

1.休日も、平日と同じ時間に起床し、1日の基本ペースを崩さない

2.副交感神経の上がりすぎに注意する

3.平日にはできない予定を入れる

最近は「睡眠負債」という言葉も登場しました。毎日の睡眠不足が、まるで借金のようにちょっとずつ積み重なり、心身のダメージが蓄積してしまっている状態のことを指します。睡眠不足状態が続けば、免疫力が低下しますので、風邪などの病気に罹りやすくなります。

また、脳機能も低下しますので、仕事でのケアレスミスも増えてしまうでしょう。

だからこそ、「週末に寝だめ」という考え方も出てくるのですが、結論から言うと、寝だめで睡眠不足は解決しません。むしろ、寝すぎることで副交感神経が上がってしまい、自律神経が乱れてしまいます。

長すぎる睡眠はかえって体に疲労を蓄積させ、倦怠感が増します。体内時計もずれてしまいますので、夜の寝付きが悪くなり、次の日の朝、気持ち良く起床することができません。寝だめすることで、自分で「時差ボケ」状態を作り出してしまっているのです。「睡眠負債」は、入浴を工夫するなど、1日ずつ返していくのがいいのです。

大事なのは、副交感神経と交感神経のバランスを崩さないこと。言い換えれば、平日と休日の生活バランスを同じにすることなのです。

とはいえ、休日まで、平日のように過ごしたくありませんよね? だからこそ、「平日にはできない予定を入れる」といいのです。

例えば映画やコンサート、美術館に行く。読書三昧というのもいいでしょう。部屋の片付けもお勧めです。きちきちのスケジュールを決めず、「今日はこのひとつ」という予定を決め、それを楽しむのです。

平日にできないことをしたことで、充実感と達成感が得られます。「ゆるやかな計画」であれば、「スケジュールをこなさないといけない」という心的圧迫もありません。行動しているので寝付きも良くなり、月曜の朝の目覚めも爽快でしょう。

  『不摂生でも病気にならない人の習慣』

小林弘幸 著

小学館
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文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。

 

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