文 /小林幸子
小林幸子の「幸」を招くルール
ファン歴50年以上の方はもとより、若者やネットユーザーからも「ラスボス」と称され、幅広い層に圧倒的な人気を持つ小林幸子さん。
小林さんの「今が楽しい、自分らしい人生」をおくるための秘訣とは?
齢を重ねるたび、元気と勇気、パワーを増し続ける、ラスボス流「言葉の魔法」を初披露!
ラスボス式「人の惹きつけ方」
知識やテクニックだけじゃない。大切なのは“志”が立派かどうか。次々と未知の世界の扉を開けて新たなことに挑む、その原動力はどこにあるのか。そして、進化を重ね続ける秘訣とは?
ルール10
実は私、“ひとりでいる”のが大好きなんです。「じゃあ何で結婚したの?」と突っ込まれそうですが、ずっとひとりでも生きていく自信はあります。でもだからこそ、夫とひとつ屋根の下、うまくいくのかもしれませんね。
『王様のブランチ』(TBS系)の人気コーナー「買い物の達人」に出た時のことです。その時のリポーターの鈴木あきえちゃんが、突然、
「小林さんって、機嫌が悪いことはないんですか?」
と聞いてきたんです。
「そりゃあ私だって機嫌の悪い時はあるわよ」
と答えると、そんな時はどう過ごしているかと尋ねてくる。
ふと口をついて出た言葉がこれ。
「自分の機嫌は自分で取るものよ」
あきえちゃん、この言葉をすごく気に入ってくれたようで……。きっと、うまくいかない時や落ち込んだ時に、「誰か」の慰めを期待していたと思うんですよね。でも、それって、自分の機嫌を誰かに理解してくれってことでしょ?
自分の機嫌をいちばんよくわかっているのは、どう考えたって自分。だって、機嫌が悪い理由だってわかってるんだから。他の人に慰めてもらったところで、自分が納得しなければ機嫌も直らない。他人に愚痴っても、相手に迷惑をかけるだけ。結局、自分で解決するほかないと思うんです。
私が「鏡の中の私」と会話する理由
じゃあどうやって、自分で自分の機嫌を取るかってことですよね。
人それぞれの方法で機嫌を取ることが大事だと思いますが、私の場合は、「鏡」が魔法のアイテムになります。
鏡に向かうと、そこに映っているのは、その瞬間の私。機嫌の善し悪しも、肌つやも、全部隠しようがなく映っています。
「鏡の中の私」に、私はひたすら話しかけるんです。最初は、自分を褒めます。「よくやってるよ、なかなかできないことだよ」って。
でもそのうちに、不思議なもので自分では自分に噓がつけない。
いい加減なことを口にしていると、
「お前、噓ついていたな」となる。
「そうだね、ちょっと取り繕っていたね」と、「鏡の中の私」と会話が続いていくんです。
やがて、自分でも気づかなかった本音が漏れ出して、それを「鏡の中の私」に聞いてもらっているうちに、すーっとラクになってくる。
行為としては、化粧を落とすことと似ているのかもしれません。
化粧というのは、言い方は悪いですが、ある意味、鏡に向き合いながら、少しずつ噓を重ねていくようなもの。その逆で、「鏡の中の私」と会話するということは、噓をひとつずつ剝がしていく作業です。
不機嫌な顔はね、やっぱりきれいじゃない。ひどい形相をしている。でも、鏡に向かって本音を声に出していると、だんだんと表情が穏やかになっていく。
「あなたは大丈夫」と自己暗示にかけているのとは違います。本音を吐き出していると、自分がニュートラルなポジションに戻っていくんです。
楽屋でもよくやってますよ、自分との会話。でも、トントンとノックがあったら、すっとやめて、笑顔の小林幸子に変身しますけどね(笑)。
大切にしている物には魂が宿る?
お風呂で自分のカラダと会話するのもいいですよ。
私の場合、ちょっと外反母趾気味で、一日終えると足が痛くなることが多い。だからお風呂に入るたび、足を褒めてあげるようにしています。
「お前、今日もよくがんばったね。温めてあげたからね、ごめんね」
腰が痛い日は、さすりながら、腰に話しかけます。
「痛かったね。でもやり通したね。偉いね」
お風呂から上がったら、ウチのネコも褒めてあげる。
他人が聞いたら「小林幸子、大丈夫か?」と思われそうですけど、いいんです。私はそうやって、自分のパーツを褒めちぎったりいたわったりして、明日への活力を得ているんですから。実際、次の日調子がいいんですよね〜。
そういえば、大切にしている物には魂が宿るっていいますけど、あれ、本当ですよね?
私、自分の衣装にもよく話しかけているんですが、1か月間の劇場公演の時に、紅白で着た衣装を身につけた時のことです。この衣装はこの日で最後にする予定でした。
「これまでがんばったね〜。今日の舞台で最後だからね。ありがとう」
衣装を抱きしめ、声をかけて舞台に上がりました。
さあ歌い終わって緞帳が下ります。そしたら、誰も触れていないのに、突然、衣装がほどけて、バラバラと落ちたんです。ああ、この子は役目が終わったと思ったんだ。最後の力を振り絞ってがんばってくれていたんだ。
やっぱり言葉には不思議な力があります。ですから、自分への声かけは、必ず自分を元気にしてくれると私は信じています。
一、本音を吐き出せばニュートラルなポジションに戻れる
一、自分への声かけは必ず自分を元気にしてくれる
小林幸子(こばやしさちこ)
1953年、新潟県生まれ。64年、『ウソツキ鴎』で歌手デビュー。その後、長く低迷期が続いたが、79年、『おもいで酒』が200万枚を超える大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の賞を受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場。以来、34回出場し、その「豪華衣装」が大晦日の風物詩と謳われる。近年は、若者やネットユーザーの間で、「ラスボス」と称されるようになり、ニコニコ動画への「ボカロ曲」の投稿やアニメ『ポケットモンスター』の主題歌を歌うなどして、“神曲”を連発している。
ラスボスの伝言
~小林幸子の「幸」を招く20のルール~