マグロの旨さは赤身にあり

大間では、夏から秋口までが、マグロの水揚げの最盛期。その後、水温が下がってくると、漁獲量は減少するが、寒さが厳しくなるほどに脂がのってくる。夏から秋のマグロとは、ひと味もふた味も違った魚になってくる。

マグロは、赤身にこそ本当の味があるとよく言われる。トロのように脂肪の多い部位は、脂の旨さで食べるもの。それに対して赤身は脂が少ないため、身肉の味がよくわかる。赤身魚は、ヘモグロビンが多い。だから「血の香り」がする。そして「血の味」には酸味がある。これこそ、マグロ本来の旨さなのだ。大間のマグロのように適切に処理されたものなら、その味が生きている。

東京・世田谷の『入船寿司』は、その日築地市場に並んだマグロの中で最上級のものを仕入れている名店だ。主人の本多克己さんは、マグロに合う日本酒についてこう語る。

「酒は料理の一部です。マグロの味を邪魔しない、ひとり歩きしない、目立ち過ぎない、これらの条件を満たした酒が、最も相性がいいといえます」

銘柄でいえば、金沢の蔵元・中村酒造の『加賀太鼓』。さらっとした飲み口で、しっかりした味。大間のマグロの味を引き立てる名脇役だという。

 

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