また、ソバの産地が、いろいろ明記してある店も面白い。そこまで関心を持って仕事をしている店主なら、いろいろ研究しているはずで、旨い蕎麦を出してくれる可能性は大いにある。特に、そのソバ産地の中に「福井」とか「大野」「丸岡」「妙高」「こそば」などの名前がある場合は、アタリの可能性はさらに高くなる。
もうひとつ付け加えるならば、「てんもり」とか「鴨なんばん」など、蕎麦屋の定番メニューのほかに、「冷製、梅サラダそば」など、様々な創作メニューを並べてある店も、思い切って挑戦してみたい。食べてみて、もし失敗だったとしても、「おいしかったけれど、もっと味を薄くしたほうが私は好きです」などと、一言コメントしてあげたい。こういう意欲的な店なら、次に訪れたとき、欠点が改善されている可能性があるからだ。
蕎麦屋さんは、食べてみて、おいしくなくても、できるだけ苦言を呈して、また行ってみるようにしていただけるとうれしい。味に不満があったら、もうその店には行かないとなると、いつまでたってもおいしい蕎麦屋さんは育たない。店は客が、大切に育てていくものだと思う。
だから本当の目利の方法は、一度食べてみて、「遠慮なく苦言を呈してみる」ことではないだろうか。店側が不愉快そうな態度を見せたり、次に行ってみて改善された様子がなかったりしたら、もうそこには行かなければいい。たくさん苦言を呈して、それを参考に改善してくれる蕎麦屋さんを見分けることが、本来の目利というものではないだろうか。その後、何度も通うほどに、その店はあなたの好みの味の、美味しい蕎麦屋に成長してくれるに違いない。
文・写真/片山虎之介
世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)などがある。