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160年前の俵に入っていたソバの実でできた蕎麦を食べてみた!【片山虎之介の「蕎麦屋の歩き方」第30回】

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「もしも」という仮定は想像力の翼に力を与え、楽しい夢を見させてくれる。「もしもタイムマシンで江戸時代に戻って、農家からソバの種をもらってきたら」いったい、その蕎麦は、どんな味をしているのだろう。実はそういうことが夢ではなく、現実に起こったのだ。

もちろんタイムマシンなどという便利な機械があるわけではない。江戸時代に隠されたソバの俵が、福島県の豪農の天井裏で人知れず160年の歳月を過ごし、古民家を解体しようとしていた現代の人々に発見されたのだという。

ある日、僕の家の郵便受けに、山形の鈴木製粉所から蕎麦の試食会の招待状が届いた。何の試食かと封筒を開いてみると、書かれていたのは天井裏から出てきた、その蕎麦のことだった。

冷害などで凶作が続き、人々が飢饉で苦しんだ天保時代、福島県の豪農が非常時に栽培するようにと、屋根裏にソバの種を保管しておいたのだという。ソバという作物は成長が早く、種を播いてから75日で収穫できる。その早さが買われ、昔から稲が凶作のときなど、ピンチヒッターとしてソバが播かれ、人々を飢えから救ってきた。ソバは主食ではなく救荒作物として、ずっと人間に寄り添い、その命を守ってきたのだ。

福島の豪農も次の凶作のときは、このソバを播こうと思って天井裏に隠したのだろう。しかし幸いにも、それを使う必要がなかったのか、あるいはすっかり忘れていたのか、俵に詰められたソバの実は、出番を告げられることもなく、屋敷が解体される平成の時代まで、静かに眠り続けたのだ。

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