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駄菓子ひとすじ320年!仙台駄菓子の元祖『熊谷屋』の駄菓子【老舗銘菓ものがたり】

なつかしい味わいの『熊谷屋』の駄菓子たち

文/鈴木拓也

伊達政宗が仙台に城下町を築いてから、一世紀近く経た1695年(元禄8年)。元禄景気に活気づく青葉城下で、一軒の菓子屋が産声を上げた。これが『熊谷屋』である。

創業者の熊谷治三郎が扱った商品は、駄菓子。それまでは、くず米などを材料に台所で作られていた駄菓子を、台所の味を超えるものに仕立て、購買意欲の高まった庶民に売り始めたのだ。

仙台市内に店を構える『熊谷屋』本店

当時、白砂糖は希少な高級品であったため、仙台藩は上菓子司にかぎりその使用を許し、庶民向けの菓子屋が使えるのは黒砂糖のみだった。しかし、治三郎以下代々の『熊谷屋』当主は、豊富にとれる米に大豆、麦、胡麻などの雑穀を組み合わるなど創意工夫をこらし、数十種類におよぶ多彩な駄菓子を考案し、人気を得た。

その後『熊谷屋』は、度重なる飢饉など幾多の困難を乗り越えつつ、明治維新を迎えた。仙台には多くの学校が建てられ、全国から多くの若者がやってきた。そんな彼らには、おやつに腹持ちのよい駄菓子が好まれ、『熊谷屋』はそうした客でにぎわった。

店の向かいに13歳になるまで住んでいたのが仙台を代表する詩人・土井晩翠。彼も『熊谷屋』の常連であった。第八代当主の熊谷熊蔵は、「熊谷屋の飴玉をしゃぶって大きくなった」とよく話していたという。

他の幾つもの老舗がそうであったように、『熊谷屋』も太平洋戦争時の空襲によって全てを失う。駄菓子屋の看板が復活したのは、経済白書が「もはや戦後ではない」と記した翌年の1957年のことであった。

この年、熊蔵は新たな駄菓子として『ささら飴』を考案する。細かく割った竹を束ねた「ささら」の先に飴を刺したもので、駄菓子らしからぬ美しさが評判を呼んだ。

これは、仙台に行幸された昭和天皇・皇后両陛下の御買上げに選ばれるという、最高の栄誉を得た。

昭和天皇・皇后両陛下が御買上げされた『ささら飴』(現在はささらに刺さずに販売)

現在、『熊谷屋』が製造している駄菓子は、およそ30種。駄菓子は全国各地にあるが、これほどの種類を揃えているところは、ここくらいなものだろう。「仙台駄菓子の元祖」と一目置かれているゆえんである。

どれも、口に入れるとなつかしい味が広がり、はじめて食べたのに、なぜか子供の頃に食べたような気がする不思議な感覚にとらわれる。

なつかしい味わいの『熊谷屋』の駄菓子たち。口承によって代々その製法が伝えられた駄菓子だが、時代にあわせて素材や味は変えているという。

例えば、今の若い人は硬いものは好まないので、駄菓子も昔に比べてやわらかくなっている。また、震災復興の一助として企画されたアニメ『Wake Up, Girls!』にて、主要キャラのひとり林田藍里の実家が『熊谷屋』という設定となっており、アニメの聖地巡礼に折々ファンが訪れてくるという。

伝統を意識しながらも、こうした時代の変化に対応する柔軟性が、暖簾を300年以上守り続ける秘訣なのだろう。

今日の老舗 元祖仙台駄菓子本舗 熊谷屋』
住所(本店) 宮城県仙台市青葉区木町通2-2-57
電話 022-234-1807
営業時間 8:30~17:30
定休日(本店) 日曜日
売店 仙台エスパル店、ザ・モール長町店、仙台空港ビル売店
公式サイト http://kumagai-ya.co.jp/

文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。

取材協力/元祖仙台駄菓子本舗 熊谷屋

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