遥かなる大陸の中央や辺境、台湾からも、日本めがけて押し寄せている「ガチ中華」の波。勁(つよ)くて旨い未知なる味に、今こそ出会う。

茹で時間は1分、幅広の麵に具材を絡めて食す西安の定番料理

油泼麺(ヨウポーミェン)

1本の麵が7mにもなるという、𰻞𰻞(ビャンビャン)麺。もっちりとした食感で様々な味が絡み合い、200g(1人前)以上でも食べ飽きない。950円。
「油泼(ヨウポー)麺」などの汁なし麵には茹で汁が付く。食べながら汁を飲むと口がさっぱりするだけでなく、消化も助けてくれるという。

画数の多い漢字で知られる「𰻞𰻞(ビャンビャン)麺」は、陝西省(せんせいしょう)・西安名物の幅広の手延べ麵のことである。西安はかつて長安と呼ばれた中国王朝の町。乾燥した平地が広がり古くから小麦の栽培が盛んなため、麵料理の種類も豊富である。またイスラムやモンゴルの食文化の影響を受け、羊肉料理も多い。

「𰻞𰻞(ビャンビャン)麺」の名前の由来には諸説あり、一説には麵を台に打ちつける際にビャンビャンと音がすることからといわれている。厨房で打つ麵の音が店内に響き渡るのが、『西安麺荘 秦唐記』である。

麵は小麦粉に水と食塩を加えて生地を作り、一日寝かせてコシを出す。小分けにした生地を茹でる直前に大理石の打ち台に叩きながら両手で延ばし、麵に仕立てる。手打ち歴10年以上という職人の馮樹(ふうじゅ)さんの手にかかると、まるでマジックのように、きし麵状の麵があっという間に出来上がる。茹で時間もわずか1分である。

よく混ぜて食す「油泼(ヨウポー)麺」

茹で上がった麵にキャベツなどの茹で野菜と豚叉焼の角切り、葱や唐辛子などの薬味を盛り、200℃に熱した油を注ぐ。この油をかけることを「油泼(ヨウポー)」と呼び、「𰻞𰻞(ビャンビャン)麺」のもっとも一般的な食べ方である「油泼(ヨウポー)麺」となる。

「現地では麵と唐辛子、葱、油( 辣油)があれば充分なのです。これが西安の麵文化です」と解説するのは、代表の小川克実さん。

目の前に運ばれてきた「油泼(ヨウポー)麺」は、高温の油によって葱と唐辛子の香りが立ち昇り、食欲をかき立てる。すぐさま鋏で麵を食べやすい長さに切り、麵と具材と丼の底にある黒酢のタレをよく混ぜ合わせる。幅広の麵が辛み、酸味、旨みを包み込み、渾然一体となる。

店では1.5cmほどの幅の麵を「𰻞𰻞(ビャンビャン)麺」、その倍の幅の麵をベルト麵とし、さらに細麵も用意。汁なし、汁ありなど、多彩な麵料理が味わえる。

西安出身の馮樹(ふうじゅ)さんが生地を延ばし、麵に仕立てる。店では麵打ちの職人を育成し、本場の味を伝えている。

西安麺荘 秦唐記 永代総本店

都内に5店舗を展開。店内には「𰻞(ビャン)」の文字の書き順を示す案内もある。

東京都江東区佐賀1-1-16
電話:03・5875・9685
営業時間:11時~15時、17時~23時(最終注文22時30分)
定休日:無休 37席。
交通:東京メトロ東西線ほか門前仲町駅から徒歩約10分

覚えておくと便利なガチ中華用語集

※この記事は『サライ』本誌2025年3月号より転載しました。

サライ2025年3月号は大特集『「ガチ中華」VS「町中華」』

 

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