遥かなる大陸の中央や辺境、台湾からも、日本めがけて押し寄せている「ガチ中華」の波。勁(つよ)くて旨い未知なる味に、今こそ出会う。

名物は牡蠣のオムレツ。「裏」バージョンも味わいたい

海蠣煎蛋(ハイリージェンダン)

牡蠣は中国産の小粒のものを使う。もっちりした生地と磯の風味が強い。醤油、酢、砂糖、大蒜(にんにく)が入ったタレでいただく。1100円。

中国南東部に位置する福建省。東側に長い海岸線や多くの半島がある地形から海産物が豊富で、内陸部は筍や茸など山の恵みにあふれる。ゆえに福建料理は新鮮な食材が容易に入手できる環境で多彩な食文化を生み出してきた。また海峡を挟んで台湾と向かい合い、往来も盛んなため、台湾料理との共通点も多い。味の特徴は全体的にあっさり、かつまろやかで、野菜や海鮮の旨みを生かした料理が味わえる。

福建省の港湾都市・厦門(アモイ)の名を冠する『厦門厨房』は2003年の開店。厦門では名産の牡蠣を使う料理が多く、その代表的な料理が牡蠣オムレツ「海蠣煎蛋(ハイリージェンダン)」である。店の品書きに載る写真は、卵をたっぷり使った台湾の屋台料理で知られる「蚵仔煎(ホーズージェン)」のようだが、裏メニューともいえる「ガチ中華版」を作ってもらった。

「海蠣煎蛋は、お好み焼きが大阪と広島で異なるように、地域によって違います。卵を使わない場合も多いのです」と話すのは代表の高小強(こうしょうきょう)さん。

目の前に登場した一品は、牡蠣とニラ、そして岩海苔を片栗粉でつないだ料理で、岩海苔の豊かな磯の香りと牡蠣の旨みがストレートに伝わる。これぞ厦門の本場の味である。

味の決め手は「福州笋丝(フージョウスンスー)」

福建省の郷土料理のひとつに「福建焖麵(フージェンメンミェン)」がある。具材を鍋で炒め、スープと麵を加えて作る汁焼きそばで、一説には長崎ちゃんぽんのルーツともいわれている。

福建焖麵(フージェンメンミェン)

海鮮の旨みが強く、匂いも含めくせになる味わい。薬味のセロリの苦さが、アクセントになっている。1500円。
野菜を炒め、魚介とスープ、麵を鍋に入れる。麵は生麵を茹でずにそのまま入れて煮込むことで、小麦粉のとろみがつく。

野菜や牡蠣、海老、烏賊の魚介の旨みが染み出したスープと麵が絶妙だが、何か独特の発酵臭がする。臭いの正体は福州市の筍を発酵させた「福州笋丝(フージョウスンスー)」という調味料。シャキシャキとした歯ごたえもあり、炒め物やスープなどに多用される福建料理の味の決め手である。臭いが気になる向きもあるが、福建人にとっては、これこそが紛れもなく郷里の香りなのだ。

筍の発酵調味料である福州笋丝(フージョウスンスー)。福州市特産の筍(真竹)を薄切りにし、塩漬けにして発酵させた伝統的な調味料。

厦門厨房

飲食店が集まる蒲田駅西口近くに立つ。頼めば裏メニューも供してくれる。

東京都大田区西蒲田7-27-6裕大ビル1階
電話:03・5713・1517
営業時間:11時30分~15時、17時~翌4時、日曜は~24時 
定休日:不定 40席。
交通:JR京浜東北線、東急多摩川線蒲田駅から徒歩約3分

取材・文/関屋淳子 撮影/高橋昌嗣

覚えておくと便利なガチ中華用語集

※この記事は『サライ』本誌2025年3月号より転載しました。

サライ2025年3月号は大特集『「ガチ中華」VS「町中華」』

 

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