遥かなる大陸の中央や辺境、台湾からも、日本めがけて押し寄せている「ガチ中華」の波。勁(つよ)くて旨い未知なる味に、今こそ出会う。
20以上の少数民族が暮らす雲南省の酸味と辛みが調和した薬膳料理
蒸気石鍋魚(ジョンチーシーグオユー)
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中国南西部の雲南省。雲南料理は3つの地域に分類され、東北部は四川料理に近い味、少数民族が多く暮らす西部から西南部は独自の料理、南部は温暖な気候で茸などがふんだんに使われる。これらが融合し、総じて辛さと酸味がほどよく調和し、食材も豊富なことが特徴である。また「医食同源」に基づき、クコの実や百合根などの漢方を取り入れる料理も多く、特有の食文化が形成されてきた。
『食彩雲南 湯島店』は4年前に開店した雲南料理専門店。代表的な料理のひとつ「蒸気石鍋魚」は、油を一切使わず、蒸気の圧力で魚や野菜、茸などを蒸し上げる。魚とスープを鍋に入れ、帽子のような藁で編んだ蓋をして蒸す。蒸気とともに薬膳の香りが満ちる。
「昔は、山へ茸などを取りに行き、かぶっていた帽子をそのまま鍋の蓋にしていました。ですから今も蓋は帽子のような形なんです」と話すのは店長の翁祖亭(おう そてい)さん。南瓜をベースにしたスープはピリリとした辣油と酢、レモンの酸味が効き、魚の出汁も滲む。さらに野菜などの具材を追加。家族や友人が集まるときに食す料理という。
食材の宝庫アメ横へ
店の食材は中国から取り寄せるものもあるが、近くの上野・アメ横でも入手する。鮮魚店や中華食材店など、翁さんは馴染みの店へよく出かけるという。再現された故郷の味は、酸辣(スワンラー)と薬膳の香りに満ちた滋味深い味わいである。
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1995年に来日し、共同経営者の牟(もう)さんとともに『食彩雲南』湯島店のほか4店舗を運営する。社長とも親しいアメ横の『京和水産』で鮮魚を探す。上野は第二の故郷と話す。
『食彩雲南』のもうひとつの代表的な料理が米線(ミーシェン)を用いた「過橋米線(グオチァオミーシェン)」である。米線とは米から作った麵のことで乾麵のビーフンとは異なり、うどんを細くしたような断面が丸い生麵のこと。この料理は百年以上の歴史がある名物で、雲南省の蒙自(モンツー)という町が発祥といわれている。過橋とは橋を渡るという意味で、蒙自の小島で科挙の試験を受ける夫のために妻が橋を渡って熱々の米線の鍋を届けたことに由来する。ゆえに米線とともに鍋に入れるハムや茸などの具材は小皿に盛られ、橋のような仕様で供される。
山珍過橋米線(シャンジェングオチァオミーシェン)
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珍味・もみじは人気メニュー
店での人気料理に鶏足のもみじの煮込みがある。動物のあらゆる部位を食材とする中国料理らしい一品で、鶏足はコラーゲンが多いヘルシーな部位。醤油や唐辛子、老酒(ラオチュー)などでじっくり煮込むと、唐辛子の爽やかな風味がよく絡まる。
雲南料理らしい酸味が際立つ料理として勧められたのが「版納酸湯魚(パンナースワンタンユー)」。これは白身魚とトマト、青梗菜などの酸味煮込みで、ほっと気持ちが和(なご)む味わいであった。
蒜蓉傣味鶏爪(スワンロウダイウェイジージュワ)、版納酸湯魚(パンナースワンタンユー)
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食彩雲南 湯島店
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東京都台東区池之端1-1-1MK池之端ビル2階
電話:03・3836・1898
営業時間:11時30分〜15時(最終注文14時30分)、17時〜23時(最終注文22時)
定休日:無休 48席。
交通:東京メトロ千代田線湯島駅から徒歩約1分
覚えておくと便利なガチ中華用語集
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※この記事は『サライ』本誌2025年3月号より転載しました。
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