特注の大きな石窯を使い、フレンチシェフが焼き上げる

しっとりしつつ、ほくほくした食感のべにまさり。
紫福(品種名はふくむらさき)は甘みが濃くねっとり。ともに茨城県、JAなめがたしおさい産。4サイズを揃え、Sサイズは600円。

東京の下町、谷中銀座商店街に佇む『蜜芋研究所』は、浅草でフランス料理店を営む岡部勝義さん(47歳)が開いた焼き芋の専門店である。フレンチシェフとして培った技法を用いる焼き芋は、緻密な味わいで、皮まで柔らかく旨い。岡部さんはその秘訣をこう語る。

「料理の味は、素材の水分をどうコントロールできるかで左右されます。焼き芋も同じでしょう。品種などによるサツマイモの個性を見極め、最初はコンベクションオーブンで蒸気量を調整しながら蒸し焼きにします。熱と水分によってイモの糖化を最大限に促してから、窯で焼き上げています」

最初にコンベクションオーブンでサツマイモを蒸し焼きにする。
石窯に移し、「でんぷんが糖に変わりやすい温度帯の55〜72℃を保ちながら遠火で焼く」と岡部さん。

売り場の隣室に設置されているのは、レンガを積み重ねたコの字形の大きな石窯だ。岡部さんが最高の焼き芋を作るために案を出し、特注した。皮の水分が飛び過ぎて固くならないよう、熱源となる炭から50cmほど離した遠火で焼く構造になっている。

焼き芋で農家を応援したい

「生産者である農家にとって、サツマイモは皮まで含めて作品。ですから、旨味と香りのある皮ごと美味しい焼き芋を目指しました」

そもそも岡部さんが焼き芋の専門店を開いたのは、「サツマイモ農家を応援したい」との想いが強かったからだ。食材探しで産地を巡るなかで、サツマイモづくりに情熱を捧げる数々の農家に出会った。以来、良質なサツマイモを仕入れ、様々な料理を提供してきた。

店頭には、その時期、最も味がのった3品種の焼き芋が日替わりで並ぶ。現在、岡部さんはサツマイモの品評会の審査員を務めているため、全国各地の個性的なサツマイモにいち早く出会える。最近は茨城県・市毛農園のシルクスイート、徳島県・北林農園の鳴門金時などが最高級の品質だといい、同店でも提供している。

焼き芋にカスタードをのせて焼いた「蜜芋いもブリュレ」800円。奥は、裏千家の茶名を持つ岡部さんが考案した「抹茶オーツミルクラテ」700円。

蜜芋研究所

東京都荒川区西日暮里3-15-3
電話:03・6845・5083
営業時間:10時〜19時
定休日:月曜(祝日を除く)、第1・第3火曜、年末年始
交通:JR日暮里駅より徒歩約5分

※この記事は『サライ』本誌2025年1月号より転載しました。

 

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