咲き誇る花と緑の織りなす美しさを、うるわしと讃えられた大和の国。悠久の古を歩きながら、この地で産する食材をふんだんに用いた料理をじっくり味わいたい。

農と陶と手打ちそば 旅木|畑暮らしが生む澄んだ味わいの蕎麦

蕎麦粉十割の「もり」1000円。つゆは宮崎出身の由香さんが九州の醤油を加えて作るため少し甘め。薬味は辛味大根と葱。季節の寒天が付く。

「蕎麦屋をやりたいとはまったく思っていなかった」と話すのは『旅木(たびき)』店主の松島誠司さん(54歳)。

会社勤めをしながら耕作放棄地を借り受けて、野菜を作る日々だった。畑を拡張し、ニホンミツバチを育てた。ソバを栽培し始めたのは、花の少ない時季にミツバチに蜜をとらせるため。畑仕事の合間には器を作る。そんな日常が一変したのは、夜勤から日勤への人事異動だった。日勤では畑仕事や養蜂はもちろん作陶も難しい。一念発起して退職し、店を開いた。2018年のことだ。

ニホンミツバチの巣箱の周りには、梅や桜、ベリーやアカシアなど80本の木。巣箱は下に継ぐ、新たな箱を置くなど毎年増やしている。

「自信がないからひっそりと開業しました。近くを通った方がたまたま見つけてくれたらと」

いつのまにか評判の店となっても営業のスタイルは変わらない。店を開けるのは、昼前後の3時間だけ。夏は「もり」、秋から春には「かけ」も供す。時季には収穫したバジルを使った蕎麦がメニューに並ぶこともある。畑の側で飼う鶏が産んだ卵は妻の由香さんの手でプリンになる。蜂が集めた蜜や、ブルーベリージャムは瓶詰にしてお土産用。ここで生き、育つものすべてが、食べる人の栄養になる。誠司さんが作る器もまた手に取る人を癒してくれる。

木造りの清々しい店。床の敷瓦や壁の和紙は、松島さん自らが、作業して貼ったという。テーブル3卓が、ゆったりと置かれている。

農と陶と手打ちそば 旅木

法隆寺参道から10分ほどの閑静な住宅街。白い暖簾が開店の目印。店横には駐車場もある。 

生駒郡斑鳩町法隆寺西1-3-6
電話:0745・74・0438
営業時間:11時~14時
定休日:火曜、水曜、不定休あり
JR法隆寺駅から徒歩約23分

※この記事は『サライ』本誌2024年11月号より転載しました。

『サライ』2024年11月号は特別付録「『ザ・スコッチハウス』スケジュール手帳」付き。

 

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