ほんの少しご飯にのせるだけで、格別なおいしさと贅沢な気分をもたらすのが「めしのせ」。鰹節、梅干し、佃煮といった、普段は脇役の「めしのせ」を主役に仕立てる注目店を案内。
新橋玉木屋 新橋本店 (東京・新橋)
天明2年(1782)に創業した『新橋玉木屋』は佃煮の老舗として知られるが、創業時から続くのが、黒豆の一種、雁喰豆(がんくいまめ)を煮た「座禅豆」。座禅豆は江戸時代後期に著された当時のガイドブック『江戸名物誌』にも紹介され、また永井荷風(1879〜1959)も『断腸亭日乗』に記している名物だ。
『玉木屋』の佃煮が誕生したのは、3代目主人、七兵衛の時。佃島の漁師が煮た小魚を売っていたことにヒントを得て、独自の風味を添えたことにはじまる。今も受け継がれる秘伝のタレを使い、佃煮を作り続け、ここ本店のイートインスペースでおにぎりかお茶漬けとして味わうことができる。
白米と佃煮の絶妙なバランス
新潟県のコシヒカリを使ったおにぎりは約100g。素材によって変わるが具材は7〜9gで、これがご飯と佃煮、両者の味を楽しめる抜群のバランスとのこと。鰹出汁を注ぐお茶漬けにも同量のご飯と具材が入る。保存食として重宝された江戸時代の名残だろう。醬油の塩味を感じさせる佃煮は、ご飯の甘みをしっかりと引き立て、出汁にもコクと旨みを加える。
新橋玉木屋 新橋本店
住所:東京都港区新橋4-25-4 石田ビル1階
電話:03・6450・1231
営業時間:飲食カウンター(イートインスペース)11時~18時(17時15分最終注文)
定休日:無休
交通アクセス:JR山手線ほか新橋駅から徒歩約6分
取材・文/武内しんじ 撮影/貝塚 隆
※この記事は『サライ』本誌2024年3月号より転載しました。
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東京の片隅で夜だけ営業する「めしのせ食堂」を舞台にした、山口恵以子さんの新作小説。身近に起こりうる10編の物語と、そこに登場する「ご飯のおとも」の商品情報を、写真とともに紹介した“小説とお取り寄せ情報”の二本立て。商品のセレクトはご飯のおとも専門家として活躍する長船クニヒコさんによる。読んで満足、取り寄せて満腹になる、おいしい一冊をぜひお手元に。