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体重や血糖値、血圧の数値は気にしているのに、“口の老化”を気にかける人は少ないといえます。でも、多くの研究者が「すべての老いは口からはじまる」と警鐘を鳴らしていることをご存じでしょうか。

最近、「食事中によくムセる」「食欲がわかない」「食べているとなんだか疲れる」「胃もたれする」「口が乾く」「滑舌が悪くなった」……、そんな症状を感じている人は口の老化が始まっているかもしれません。

『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)が13万部のベストセラーとなった、歯学博士・照山裕子先生の最新刊『食事でムセる かみ切れない 口臭が気になる人のための口の強化書』から、口の老化を改善することで得られる良い効果についてご紹介します。

文/照山裕子

口まわりを動かすだけで顔色が明るくなる

第1回でご紹介した「かみかみリズム体操」を続けることで「噛む力」が強くなると、なにより美容効果が高まることは見逃せません。口をしっかり動かすということは、口まわりにあるたくさんの筋肉を動かせているということです。それによって血流がよくなると、肌の色がいきいきとした印象になり、顔全体が明るくなっていきます。たとえば、筋力トレーニングをしている人は、肌が滑らかできれいなことも多いですが、それは筋肉が鍛えられることで全身の血流がよくなり、肌を再生する成長ホルモンなども分泌されるためです。同じように、口まわりや舌も筋肉ですから、しっかり動かせば顔色がよくなり、ハリも出てきます。逆に、あまり動かしていなければ、血色が悪くなったり、たるんだりしてしまうのです。

男女ともに目元や頬のたるみ、ほうれい線などは気になるものですが、これらも口まわりの筋肉(口輪筋)が衰えることで、口角が下がってくるなど、年齢とともに老化していきます。口輪筋は、ふだんあまり意識して動かすことがない筋肉ですが、重要なのは、この口輪筋からいくつもの「表情筋」が放射状に伸びていることです。要するに、口まわりがたるんでくると顔全体の筋肉に影響し、老け顔になったり、表情の乏しい顔になったりするわけです。

「かみかみリズム体操」で引き締まる筋肉

「かみかみリズム体操」は、「口の老化」を防ぐと同時に、顔の筋肉を引き締め、老け顔防止にもつながります。

「かみかみリズム体操」と「毒出しうがい」なら、口まわりを大きく動かしますから、続けることで「4つの口の力」が鍛えられるだけでなく、肌にハリが出てきて表情が明るくなります。よく美顔マッサージなどに取り組む人がいますが、毎日「かみかみリズム体操」と「毒出しうがい」をするなかで、噛んだり動かしたりしていると、顔は自然といきいきとした感じになっていきますので、普段の生活からまずは整えることが大前提になります。口まわりの筋肉をしっかり動かすことは、健康面はもとより、美容面でもとてもメリットが大きいことなのです。

朝昼夕のメニューに「ひと噛み」を加えよう

毎日の食生活で無理なく口を鍛えるために、簡単に3食のイメージを紹介します。特定の食べ物をすすめるものではなく、ポイントは、ふだんの食事に、「しっかり噛まなければ食べられないもの」を加えることです。

朝食

和食なら卵かけごはんや、納豆ごはんを食べる人も多いと思います。これらのごはんをずるずると食べるのは、とてもおいしくて栄養もありますが、口をしっかり動かしているかというと、すすって飲み込んでしまっているだけの場合もあります。そんなときは、塩分を加えるときにしょうゆを垂らすのではなく、塩昆布にしてみると、ひと噛みする工夫ができます。もちろん、刻んだたくあんなどを添えるだけでも構いません。

洋食なら、わたしは野菜サラダに、必ずクルトンやナッツを砕いて加えるようにしています。先に述べたように、キャベツや野菜の千切りでもいいのですが、さらに噛みごたえのある食材をプラスするわけですね。かたくて細かいものが不安な人は、海藻サラダでも構いません。海藻は種類によってそれぞれ噛みごたえが異なるので、食べるだけで自然としっかり口を使うことができます。このように、ふだんの食べ物を振り返って、「あまり噛んでいないかな?」というものがあれば、「噛まなければいけないもの」をあえてトッピングすると、手軽に食のバリエーションを増やすことができます。

昼食

昼食は、いろいろな食材が楽しめる和定食のような食事が理想的ですが、ほかのどんなメニューでも、みそ汁(汁物)をつければ具材で工夫することができます。ネギを入れてもいいし、わたしはよく大きめのワカメを、ハサミで切って入れています。このとき、ワカメをやわらかくしすぎると、あまり噛まずにすんでしまうので、コリコリした弾力が残る程度に、さっとゆでたものを入れるようにしています。具材が豊かな豚汁にしてもいいでしょう。そうしたひと手間をかけることで、「噛む力」はおのずと鍛えられていきます。

夕食

夕食は、洋風メニューのときでも簡単に工夫することができます。たとえば、子どもが大好きなやわらかいハンバーグなら、ソースをエリンギやまいたけを使ったきのこソースに変えてみるといいでしょう。きのこ類は健康にいいのはもちろんのこと、しっかり噛まなければ飲み込めないので、わたしもよく活用しています。また、ハンバーグなどは、なかにれんこんなどかための食材を混ぜる工夫もできます。

人間は、食感が数種類混ざっているものを食べると、噛むときに自然と口の力をコントロールし工夫しながら食べます。そこで、ひとつの料理に、いろいろな食感を混ぜるのがポイントです。ピラフならグリンピースを入れるのもいいですし、みそ汁をつけるならけんちん汁にしてもいいですよね。ごぼう、大根、ニンジン、こんにゃくと、ひとつの料理でかなり口を動かすことができます。自分がやわらかいものばかりを食べていないかをチェックしながら、いつもの食事にひと工夫をしてみてください。

* * *

食事でムセる かみ切れない 口臭が気になる人のための口の強化書
著/照山裕子 監修/來村昌紀
アスコム 1430円

照山裕子(てるやま・ゆうこ)
歯学博士。東京医科歯科大学非常勤講師(顎顔面補綴外来)。
日本大学歯学部卒業、同大学院歯学研究科にて博士号取得。世界でも専門医が少ない『顎顔面補綴』を専攻し、口腔がんの患者と歩んだ臨床体験から予防医学の重要性を提唱する。「日本人の口腔ケアへの意識を変えるにはどうしたらいいのか?」という課題の答えのひとつとして考案した内容を『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)として書籍化。13万部のベストセラーとなった。現在は大学病院及び全国の歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも多数出演。『日経xwoman』のオフィシャルアンバサダーも務める。『新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)など、著作多数。

監修/來村昌紀(らいむら・まさき)
らいむらクリニック院長。千葉大学臨床教授。医薬学博士。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。
和歌山県出身、和歌山県立医科大学、千葉大学大学院卒業。和歌山県立医科大学附属病院などで経験を積み、2014年にらいむらクリニックを開設。著書に『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(あかし出版)などがある。

 

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