京都は不思議な街だ。日本料理の源流ともされる京料理を擁し、伝統と格式は揺らぐことはない。しかし、街を歩けば、韓国料理、スペインバル、イタリアン、フレンチ、そしてそれらの融合料理とあらゆるものがありどれも驚くほど美味しい。融通無碍な食への姿勢もまた、底知れぬ古都の懐の一端なのだ。

薪火を操り仕上げる路地奥のモダンスパニッシュ

Koke(コケ)|中京区蛸薬師町

「ローストキャベツとホエイ」。蒸し焼きにしたキャベツをメインに、ホエイ(乳清)のスープと松オイルを流す。松ぼっくりのジュース(写真)など20種の自家製ドリンク(1000円〜)も楽しめる。

御所南の閑静な住宅街の一角、小路を抜けると井戸を備えた苔庭に行き当たる。「IDO(イド)」と名付けられた飲食施設の奥に、『Koke(コケ)』は令和3年4月開業した。

店主の中村有作さん(32歳)は、神戸のモダンスパニッシュの名店『カ・セント』で修業を積み、東南アジアでも研修し、薪火料理を学んだ。

「薪火は水蒸気があり食材をしっとり仕上げる火力です。昔からある調理法ですが、食材本来の旨味や個性を引き出します」

およそ10品のコースは、アジア料理の要素を加えながらも、昆布なども用い日本の風土に添わせる。敷地内の湧水でつくる清らかなコンソメ、2品の一口前菜の後は、薪火を駆使した野菜料理や肉料理が続く。新鮮な鹿肉は杜松の実を塗って薪火で焼く、キャベツはホイルに包んで9時間かけ蒸し焼きに。薪火の火力や手法を変えて最適な火入れをする。

すぐきや金時人参といった京都の食材はもちろん、中村さんの出身地・沖縄の島らっきょう、奈良・吉野の猟師から届く鹿など国内産の食材のみを用い、唯一無二の食体験をもたらしてくれる。

ボタン海老に板状のおぼろ昆布を添わせた前菜。すぐきと山葵や、湧き水を用いたソースなども使う。木の芽やアーモンド、焼いた海老の粉などを添える。1万9800円(サービス料別)のコースの一皿。
店主の中村有作さんと、サービスを担当する妻のさちこさん。

Koke(コケ)

街中とは思えない静寂に包まれる「IDO」。ガラス張りの店内から望む白砂と苔の庭が美しい。

京都市中京区室町通二条下さがる蛸薬師町287 IDO1階
電話:075・223・5055
営業時間:12時~12時30分(最終入店)、18時または18時30分~(各入店)
定休日:月曜
交通:地下烏丸線烏丸御池駅から徒歩約4分。

※この記事は『サライ』本誌2023年10月号より転載しました。(取材・文/中井シノブ 撮影/伊藤 信)

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