“皮をむかずにスプーンで食べられる果物”と称されるほど、みずみずしい食感と味わいあるシャーベットが定評の『マチヤス』。一般に、シャーベットには生の果物、冷凍の果物、果物のピューレ(半液体状にしたもの)のいずれかを用いるが、『マチヤス』では生の果物を使う。この日は、夏のシャーベットとして人気の「すいかのシャーベット」を作った。生ゆえに、素材の選び方が大切だ。
「西瓜は身が詰まったものを選びます。収穫した直後ではなく、適度に熟したものが、風味のバランスがよく、うちのシャーベットに向いています」と、シェフの町山郁己さん。まずは西瓜を切り、ミキサーにかけてジュース状にする。
「皮は処分しますが、タネの周りの身も使うため、タネを除かず一緒にミキサーにかけます。ただし、潰さぬようゆるめに撹拌します」
果物の味わいを活かした手法
ジュース状になったら、グラニュー糖や水飴などを加えてよく混ぜる。糖類は氷結晶(※液体が凍るときに発生する結晶のこと。大きいとザラザラとした形状になる。)を小さくし、口当たりを滑らかにする。また素材の風味を引き立てるといった効果がある。
「西瓜の糖度は12度前後ですが、果物によって糖度はまちまち。それぞれの糖度に応じて、加糖の分量を加減します」と、果汁とその他の割合は、日々の状況で変わる。混ぜ合わせた後はフリーザーで冷気を当てながら固めると完成。果物の味と香りを活かすため加熱しない。これが、マチヤス流の作り方で、フレッシュさを損なわない秘訣でもある。
マチヤス謹製 「すいかのシャーベット」ができるまで
材料
『マチヤス』では冷凍の果物や果汁は使わず、いつも新鮮な生の果物を用いてシャーベットを作る。西瓜1玉から紙カップ(130mL)で40個分ほどができあがる。
おおまかな手順
(1)西瓜を4分の1に切り、タネごとミキサーにかける(タネが粉砕されない程度にゆるくかける)。ジュース状になったらザルでこし、タネなど不要なものを取り除く。
(2)ベース(グラニュー糖や水飴などを混ぜたもの)と(1)を混ぜ合わせ、アイスクリームフリーザーに入れて冷やしながら攪拌する。
(3)できたてのシャーベットを深めのバットに移し、冷凍庫で30分以上冷やす。
(4)(3)を販売用の紙カップに詰める。空気が入らぬよう、しっかりと押さえつけながら詰める。蓋をして完成。
町山郁己さん(『マチヤス』オーナーシェフ・26歳)
マチヤス
東京都墨田区京島3-20-1
電話:03・3611・3531
営業時間:11時〜15時
定休日:火曜 16席。
交通:京成押上線京成曳舟駅から徒歩約7分
“おうちシャーベット”レシピ
シャーベットを美味しく作るコツ
シャーベットとは、果汁や材料を冷凍庫で冷やし固めただけではない。凍っていながらも滑らかな口当たりを得るには、水分を細かい結晶にすることが大事。そのためには、つねに冷気を当てながら急速に冷却することが必要となる。容器をしっかりと冷やし、その冷たさを保持できる専用のアイスクリームメーカーを使うと、短時間で手軽にシャーベットを作ることができる。
レシピ(1)ジュースで「お手軽シャーベット」
果汁100%のジュース200mLに、電子レンジで加熱したハチミツ30gをボウルで混ぜ合わせ、アイスクリームメーカーに注ぐ。スイッチを入れると攪拌を開始し、約20分で完成する。
推奨品 貝印/アイスクリームメーカー(DL5929 )
レシピ(2) 日本酒で「みぞれ酒」
液体を冷凍庫に入れると凍るが、ゆっくり静かに冷やすと、液体の状態を維持できる。これを「過冷却」といい、この状態に衝撃を与えると、液体が一気に凍りはじめ、液体とシャーベットになった部分を一度に味わえる。日本酒ではそれを「みぞれ酒」と呼ぶ。瓶のまま冷やすと、中身が膨張し破裂する可能性があるため、注意したい。
つくり方
耐熱(耐冷)性のある容器に日本酒を注ぎ、冷凍庫に入れる(酒器も一緒に冷やしておくとよい)。90分ほど冷やし、過冷却状態になったら、一気に酒器へ日本酒を注ぐ。
取材・文/山﨑真由子 撮影/寺澤太郎
※この記事は『サライ』本誌2023年8月号より転載しました。