食材としてつとに評価の高い和牛。最近は脂身の少ない赤身が求められる傾向にある。その旨さを引き出す名料理人の技を知り、家庭で実践できるとっておきの調理法を学ぶ。
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家庭でステーキを焼くときに、最も難しいのは「火入れ」である。焼き過ぎれば肉汁が流れ出し、肉が固くなってしまうことも多い。
そこで、東京・南麻布の日本料理店『分とく山』総料理長・野崎洋光さん(69歳)に、失敗しないステーキの指南をお願いすると、驚くべき調理法を教えてくれた。
「焼くのは最初だけ。あとは、煮汁で温める、休ませる……という手順を繰り返し、低温調理するようにやさしく火を入れていきます」
休ませて余熱でも火を通す
野崎さんが用意した和牛はこの調理法に適しているという厚さ3cmのランプ肉。柔らかくて旨みがある、腰から腿(もも)にかけての赤身の部位だ。まず表面を焼いて軽く湯通ししたら、醤油や砂糖などで仕立てた甘辛い煮汁で温める。頃合いを見て取り出し、休ませて余熱でも火を通す。
「これを繰り返すことで、旨み成分がゆっくりと増えていき、牛肉の中心部の温度が65~75℃に達して火が通ります。タイマーをセットして、正確に時間を計って調理してください」(野崎さん)
出来上がりを切り分けると、しっとりと鮮やかなロゼ色の断面が現れ、肉汁が一滴もこぼれてこない。常識を覆すステーキの調理法にぜひ挑戦していただきたい。
指導 野崎洋光さん(日本料理店『分とく山』総料理長)
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平成元年『分(わけ)とく山』を開店。
分とく山
東京都港区南麻布5-1-5
電話:03・5789・3838
営業時間:17時~22時30分(最終注文21時)
定休日:日曜
※野崎さんの「崎」はただしくは「たつさき」です。
基本の和牛ステーキ
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【材料】(2人分)
ステーキ用和牛ランプ肉
(3㎝厚さ)・・・・・・・・・・・300g
A
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・125mL
酒・・・・・・・・・・・・・・・・・・125mL
砂糖・・・・・・・・・・・・・・・30g
醤油・・・・・・・・・・・・・・・大匙(おおさじ)1
トマトケチャップ・・・・・大匙1
クレソン・・・・・・・・・・・・・・・適量
【作り方】
1. フッ素樹脂加工のフライパン(※鉄やステンレス製のフライパンの場合、少量のサラダ油をしく)を強火にかける。温まったら牛肉を入れ、軽く焼き色がついたら返し、もう一方の面も焼いて取り出す。
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2. 別の鍋にたっぷりの湯を沸かして、焼いた牛肉を投入したら、すぐに取り出す。これで表面の脂や雑味となる汚れが落ちる。
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3. 牛肉を焼いたフライパンは洗わずにAを入れ、中火にかける。煮汁がまだ冷たいうちに、取り出しておいた牛肉を戻し入れる。
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4. 煮汁が煮立ったら、そのまま牛肉を1分煮て、さらに返して1分煮る。その間、出てきたアクは雑味になるので丁寧にすくって取り除く。
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5. 牛肉を取り出し、2分休ませる。この間、フライパンは火を止めず煮汁を煮詰める。牛肉を戻し入れ、両面を1分ずつ煮て2分休ませる。
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6. 再び牛肉を戻し入れ、今度は30秒煮て、返して30秒煮る。牛肉を取り出し、1分休ませる。まだアクが出てくる場合はすくって取り除く。
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7. フライパンの煮汁がかなり煮詰まり、濃くなってくる。そこへ再び牛肉を戻し入れ、両面を30秒ずつ煮て取り出し、1分休ませる。
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8. 仕上げに、煮汁にトマトケチャップを加える。旨みと甘みが加わり、軽やかなとろみもついて、照りのよいソースに変化する。
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9. ソースが煮立ったら、牛肉を戻し入れて温める。指で触って押し返すような弾力を感じたら取り出し、休ませる。粗熱が取れてから切る。
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【完成】
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取材・文/大沼聡子 撮影/泉 健太
※この記事は『サライ』2022年9月号より転載しました。
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