深山の自然で育つ瑞々しい野菜と贅沢に流れる時間が五感を潤す

森のオーベルジュ 星咲~きらら~(宇陀)

夕食の一例。手前から時計回りに「野菜のテリーヌ」、肉料理「大和牛のヒレ肉のグリル」、魚料理「上北山村のアマゴのコンフィ」。ワインはおもに自然派ワイン、グラス900円~。

奈良県と三重県の県境に位置する曽爾村は、周囲を1000m級の山々に囲まれる自然の宝庫。この長閑な里山に、オーベルジュ(宿泊施設付きのレストラン)が3年前に誕生。1日ひと組限定で、オーナーシェフの芝田秀人さん(42歳)・委久さん(39歳)夫妻が心温まるもてなしで迎えてくれる。地元出身の秀人さんはソムリエ資格を持ち、開業前は2年間学校に通い、食や農業の知識を深めた。

「以前は高級ホテルで働いていましたが、あるとき故郷の野菜の美味しさに触れて開眼しました。ここで人をもてなしたいと真剣に考え始めたのです」(秀人さん)

一方、委久さんは野菜料理の名店に勤務経験があり、野菜への造詣が深い。曽爾村の自然と野菜の魅力を伝えるには充分なふたりだ。

標高約550mの場所に立ち、眼下に曽爾村の家々を一望できる。正面には三峰山や高見山の稜線が広がり、ことに新緑の季節は絶景。

土地を感じる里山フレンチ

宿のテーマは「Farm to Table」(農場から食卓へ)。建物の目前には自家農園が広がり、夕食では収穫したての旬の野菜や地元食材をふんだんに使った「里山フレンチ」が供される。例えば、オクラや茄子など9種類前後の季節野菜が入る前菜の野菜のテリーヌは目に麗しく、野菜の滋味深さを実感できる逸品。また、奈良自慢の銘柄肉や川魚を使った主菜も野菜が彩りよく添えられ、主役たちを引き立てる。

「野菜は時期により近隣の農家などから分けてもらうこともありますが、年間で30~40種類は育てています。特に紫人参やカリフラワーの一種のオレンジブーケ、ロマネスコといった珍しい品種、色みの美しい品種には積極的に挑戦しています。夏は、一番種類が豊富な時期ですね」(委久さん)

宿名の「星咲(きらら)」は満天の星が由来。ロッジ風の温もりある空間で、星の輝きを眺めつつ、秀人さんおすすめの自然派ワインと料理のペアリングを満喫したい。

窓が大きく開放的なダイニング。食事のみの利用は11時30分~13時、17時~20時(ともに最終入店)。要予約(~12名)。

芝田夫妻。秀人さんは県立なら食と農の魅力創造国際大学校で料理と農を学んだ。現在は日本ソムリエ協会の奈良支部長も務める。

森のオーベルジュ 星咲~きらら~

宇陀郡曽爾村小長尾658-1
電話:0745・88・9155 
定休日:水曜
チェックイン16時、同アウト11時 
料金:1泊2食付きひとり3万800円、食事のみは昼5500円、夜8800円 1室(~4名)。

近鉄大阪線榛原駅から車で約30分。同名張駅から三重交通バス約44分で小長尾橋下車後無料送迎車。

撮影/鈴木誠一

※この記事は『サライ』2022年6月号より転載しました。

 

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