シンプルで美しく繊細、日本料理の神髄を愉しむ

味の風 にしむら(桜井)

夜の1万1000円のコースから。手前は甘鯛の焼き物、揚げた鱗、自家製からすみ味噌漬け炙り、ホワイトアスパラ添え、左奥はサヨリのお造り、右奥は翡翠豆腐。酒は1合1000円~。

桜井市役所近くの住宅街に佇むカウンター10席のみの店が、和食の名店『味の風 にしむら』である。地元出身の店主、西村宜久さん(48歳)が繰り出す料理は奇をてらわぬ真っ当な和食。素材に向き合い、その状態を見ながら考えをまとめ、料理にするという。

寝かせて旨みを引き出したサヨリは、旬の新玉ねぎの甘さとともに白ポン酢でさっぱりとしたお造りに。甘鯛の焼き物に添えた鱗はパリパリに揚げ、ホワイトアスパラガスはホイル焼きで香りを立たせ、瑞々しく。えんどう豆の翠豆腐は葛ではなく寒天でゆるく固めて、豆の滋味を繊細な舌触りに乗せる。どの料理も考え抜かれた技で、食材本来の味が存分に引き出されている。

「初夏に旬を迎える鮎はフライに、淡白な太刀魚は焼いて脂が馴染んだところに炒り胡麻をかけて香ばしくします。野菜は県産品を中心に仕入れます。桜井市の無花果は美味しいですよ」(西村さん)

食べ歩きでヒントを得る

西村さんは奈良市内や京都などでよく食べ歩きをするという。気に入った店に通い、情報を仕入れ自身の料理に活かしている。

例えば、料理の要である塩は、伊豆大島の海水を天日と平釜で作る「海の精」を3日間陰干しし、ふるいにかけて使用。これで角の取れたまろやかな味わいになるという。

食への追求心と開業17年目の経験値が、食通の心をつかんで離さない所以である。

また、この店では千代酒造の「篠峯」や今西酒造の「みむろ杉」など地酒の揃えもいい。奈良の山中で作陶する辻村史朗さんの酒器もあり、奈良の風土を感じる日本酒と料理の相性も確かめたい。

カウンターに座れば、削りたての鰹節の香りが鼻をくすぐり、コースの最後は土鍋ご飯の炊きたての香りがゆるやかに漂う。これが“味の風”か、と合点がいく。

白木のカウンター越しに確かな割烹の技が楽しめる。魚介類は、開業3年目から付き合いのある大阪の卸店から仕入れている。

店主の西村宜久さん。奈良市内の和食店『味の旅人 浪漫』で10年間修業し独立。器にも造詣が深く、志野や黄瀬戸など趣味がいい。

味の風 にしむら

桜井市粟殿1023-3 スミヨシ住宅1階
電話:0744・42・7773
営業時間:11時30分~13時(最終注文12時)、18時~19時30分(最終注文) 
定休日:月曜
予算:昼5500円、夜1万1000円 10席。要予約。

JR・近鉄大阪線桜井駅から徒歩約10分。桜井駅へはJR奈良駅から万葉まほろば線で約30分。

撮影/大腰和則

※この記事は『サライ』2022年6月号より転載しました。

 

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