街中の路地奥で味わう 心も春めく割烹料理

お酒と食事 うり(下京区)

四条河原町からもすぐという街中にあり、通いやすいことに加えお値打ち感がある。初めて訪ねる客は、料理の上質さと値段との差異にまず驚かされる。さらに通えば、穏やかな店主の人柄や親身なもてなしに惹かれていく。

平成30年に開業したこの店は、居酒屋の価格で割烹料理を味わえると人気を博してきた。飄々としているが物腰の柔らかな店主・上門邦彦さん(34歳)の力量は、その経歴からも計り知れる。京都の料亭や割烹で修業を積み、腕を見込まれ煮込み専門店の料理長に抜擢された。自店を開業してからも素材を見る目を養い、質の高い食材を仕入れて丁寧に調理する。

「人気の料理であっても、良い状態の食材がなければ、わざわざ品書きに並べることはありません」

という言葉からも、料理や客との向き合い方がわかる。

手前から時計回りに、ふきのとう、コゴミ、ウルイ。3月上旬からはさらに種類が増え、お浸しや胡麻和えなども供される。

2月頃から味わえる「山菜の天ぷら」などは、まさにそんな料理。新鮮で風味の良い山菜が手に入ったときだけの料理という。「苦みはもちろん、土の香りや質感、大きさも大切」だと話す。

衣に卵を加えず軽い食感に仕上げるのも、素材の味をできるだけ残すため。噛んだ途端に広がる爽やかな香りは、春の豊かさそのもの。3月以降、苦みが凝縮したタラの芽や独活も出回ると、和え物などの山菜料理にもする。

山菜の天ぷら

さらっとして油っぽくない衣はサクサクとした食感。軽く塩を付けて味わう。その日の仕入れにより値段は変わる。この日の盛り合わせは900円。

早春の頃は淡い味わいに仕上げる「甘鯛の蕪蒸し」も見逃せない一品。ふんわり泡立てた卵白と蕪のなめらかな質感がたまらない。甘くしっとりした甘鯛の身と絡んで旨味が増幅する。

季節の野菜を使った自家製のぬか漬けも注文し、ぬる燗とともに味わえば、気分も春めいてくる。

甘鯛の蕪蒸し

すりおろされた蕪と優しい味わいの銀あんには、山葵の風味が溶け込んでいる。肌寒い日には温かくなる一品。1200円~。

ひの菜とにんじんのぬか漬

この店の自家製「ぬか漬」を、必ず注文するという常連は多い。季節ごとの旬の野菜がちょうど良い漬け加減で登場する。350円。

お酒と食事 うり

京都市下京区足袋屋町317-15
電話:075・344・7899 
営業時間:17時~22時
定休日:月曜 
交通:阪急京都線京都河原町駅より徒歩約5分
カウンター4席、テーブル席は1階に4席、2階に4席。予算6000円~。

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎、竹中稔彦

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※この記事は『サライ』2022年3月号より転載しました。

 

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