おしゃべりする、ぼーっとする、読む、学ぶ、考える、俗世間の塵を払う──そこは人間にとって大切なものに満ちた場所。喫茶店でしか出会えない“普段着の京都”をご案内します。
日曜だけオープンするアットホームな自家焙煎店
土曜の朝8時に訪れたら、ほぼ満席。みなが開店を待ちわびていた。そんな雰囲気が漂っている。店主の高木利典さん(55歳)は印刷関係の仕事をしているので、日曜もしくは土日しか店を開けられない。
利典さんの祖父が創業、4年前までは母の禮子さんが店を切り盛りしていた。その母が倒れたのを機に利典さんが店に立つようになったのだが、難しいのは焙煎である。この店は京都の自家焙煎店のパイオニアであり、創業当時のガス式焙煎機を今も使っている。禮子さんは音と香りを頼りに焙煎していた。幸いにも禮子さんが倒れる3年前からやり方を習っていたので、なんとか店を続けることができた。
ホットケーキが新名物
この店にはお客さん由来のものが多い。お客さんがくれたギター。お客さんが作ってくれたレコード棚。アルバイトの女性も、もとは客で「バイトが必要なときはぜひ」とアピールしていたそうだ。生豆が入手できなくなったときは、京都きっての自家焙煎の名店が卸売の店を仲介してくれた。それまで面識もなかったのに。
利典さんが新しく作ったメニューもある。ホットケーキである。名店を食べ歩いて研究し、オリジナルの粉を開発した。表面には「Thank you for your kindness」(親切をありがとう)の文字が焼き印で押されている。
珈琲の店 雲仙
京都市下京区綾西洞院町724
電話:075・351・5479
営業時間:日曜の7時~15時
定休日:月曜~土曜(土曜は営業の日もあり※営業日はフェイスブック(https://www.facebook.com/unzenkyoto/)で公開)
交通:阪急京都線烏丸駅より徒歩約7分
【立ち寄り情報】
・杉本家住宅まで徒歩約1分。「奈良屋」の屋号で知られる旧家、国の重要文化財。
・膏薬辻子(こうやくのずし)まで徒歩約1分。雑貨店などが並ぶ風情ある路地。空也上人が平将門の霊を鎮めるために供養したことから空也供養、なまって膏薬になったとか。辻子(ずし)とは細い道。
取材・文/大塚 真、撮影/小林禎弘
※この記事は『サライ』2021年10月号別冊付録より転載しました。