取材・文/池田充枝
2016年、国立西洋美術館がユネスコ世界文化遺産に登録されました。同館の本館を設計したのはル・コルビュジエ(1887-1965)。
アメリカのフランク・ロイド・ライト、ドイツのミース・ファン・デル・ローエと並び「近代建築の三大巨匠」と称えられるル・コルビュジエは、本名シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ。
スイスに生まれ、同地の美術学校で学んだのち、ウィーン、パリ、ベルリンなどの諸都市で建築と美術の新しい動向に触れました。1917年からパリに拠点を定め、1930年にフランス国籍を得ています。
1918年末、ジャンヌレと画家のアメデ・オザンファンは、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の芸術を唱える「ピュリスム(純粋主義)」の運動を始めました。絵画制作に取り組みながら新しい建築の創造をめざしたジャンヌレは、1920年代パリの美術界の先端を行く芸術家たちとの交流から大きな糧を得て、近代建築の旗手「ル・コルビュジエ」へと生まれ変わりました。
世界遺産の美術館でその設計者の活動の原点を観る展覧会が開かれています。(5月19日まで)
本展は、ル・コルビュジエがピュリスムの運動を推進した時代に焦点を当て、彼及び同時代の作家たちの美術作品約100点に、建築模型、出版物、映像など多数の資料を加えて構成されています。
本展の見どころを国立西洋美術館の副館長、村上博哉さんにうかがいました。
「本展で紹介する時代は、若きル・コルビュジエが故郷のスイスを離れ、芸術の中心地パリで『ピュリスム』の運動を推進した1918年からの10年間です。
ル・コルビュジエは1923年まで、ジャンヌレという本名で絵画作品を展覧会で発表しました。また、パリの最先端の美術である『キュビスム(立体派)』に接し、画家のピカソ、ブラック、レジェ、グリス、そして彫刻家のリプシッツ、ローランスらの作品に強く惹かれます。彼はこれらの芸術家たちが、純粋な形によって『詩的感動』を生み出していると語り、彼自身の絵画や建築もそれを目指したいと考えるようになりました。
今回の展覧会は、通常はコレクションの常設展示に使われている国立西洋美術館の本館を会場として、彼の絵画、建築、都市計画、出版、インテリア・デザインなど多方面にわたった活動を振り返ります。また、彼が大きな影響を受けたキュビスムの芸術家たちによる美術作品をあわせて展示しています。
見どころは、ル・コルビュジエが造りだした建築空間と、彼自身そして彼が影響を受けた作家たちの作品の共演です。建築と絵画・彫刻の融合によって、30代のル・コルビュジエが身を置いた、パリがもっともクリエイティブだった時代の空気を感じることができるでしょう。」
1920年代のパリの空気と、ル・コルビュジエの貴重な絵画作品に触れることのできる展覧会です。ぜひ会場足をお運びください。
【開催要項】
国立西洋美術館開館60周年記念 ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
会期:2019年2月19日(火)~5月19日(日)
会場:国立西洋美術館 本館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト https://www.lecorbusier2019.jp
美術館ホームページ http://www.nmwa.go.jp/
開館時間:9時30分から17時30分まで、金・土曜日は20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし3月25日、4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
取材・文/池田充枝