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まさに机上の小宇宙!日本の文房具・筆と硯の名品がずらり《文房具の至宝》展

取材・文/池田充枝

「端渓老坑水巖琴硯」五島美術館蔵(宇野雪村コレクション)

ご存知のとおり、筆や硯(すずり)の起源は中国にあります。今回は、時代が移ろうにつれて品質が向上し、さまざまなデザインが現れてきた筆と硯の世界について、五島美術館で開催中のコレクション展《文房具の至宝展―机上の小宇宙―》の展示品からご紹介します。

「筆祖」蒙恬(もうてん)将軍

筆については、秦の蒙恬(もうてん)将軍が始皇帝に筆を献上したことが有名で、現在でも「筆祖」として崇められています。また、殷時代(前1600年頃-前1028年)の陶器の破片に筆を用いたと思われる文字が書き残されており、殷以前より筆があったことが知られています。

日本に筆が伝来したのはいつか定かではありませんが、文献によると大宝年間(701年-704年)には「造筆手」を置かれたとあり、この頃には国内で筆が作られていたことがわかります。812年には、書の名人で「三筆」のひとりである空海(774-834)が、唐の造筆法で製作した「狸毛筆」四本を天皇に献上した記録が残っています。

「琺瑯花文筆管」五島美術館蔵(宇野雪村コレクション)

現存最古の硯は、秦代の遺跡から出土

硯については、殷時代の墓から長方形の石版調色器が出土していますが、顔料をすりつぶすための石版で、硯の前身と見られます。

現存最古の硯は、秦代の遺跡から出土した素朴な磨石のもので、後漢(25年-220年)以降、彫刻された蓋や三本の足がついた装飾的なものが現れました。日本へは古墳時代(2世紀-6世紀半ば)に漢字が伝わっており、この頃にそのような硯も伝わっていたかもしれません。

中国では唐時代(7-9世紀)に、紫色を特徴とする端渓石が採掘され、さまざまな彫刻を加えて使われ始めます。日本でも菅原道真(845-903)が使った「龍牙硯」という、変った装飾の石硯が遺されています。

その後もさまざまな材料が登場し、加工技術が発達したことによって、いにしえの文人たちが机上で愛玩した「文房具」が誕生しました。小さいながらも存在感ある筆・墨・硯・紙・石印材は、今や芸術品として高い評価を得ているものが多数あります。

 

「端渓緑石蘭亭硯」五島美術館蔵(宇野雪村コレクション)

文房具の至宝展―机上の小宇宙―とは?

開催中の《文房具の至宝展―机上の小宇宙―》(~2018年7月29日まで)では、宇野雪村(1912-1995)旧蔵のコレクションから日本・中国の文房具約100点を展観します。また、特集展示として宇野雪村の書作品約10点も同時公開されます。

見どころを、五島美術館の学芸員 尾川明穂さんにうかがいました。

「いつも手元で使う文房具には、さまざまな材料で、いろいろな趣向の装飾がなされました。例えば、《端渓老坑水巖琴硯》は、深い紫色の端渓石にデフォルメした琴の形を彫ったものです。水巌という坑道より採れた上等な石を贅沢に使っており、中央には大きい円形の墨堂(墨を摺るところ)を配しています。それまでの琴形の硯とは大きく異なるデザインで、人々を驚かせたいという作り手の意欲が伝わってくるようです。

「印材 田黄(林鹿原銘)」五島美術館蔵(宇野雪村コレクション)

《印材 田黄(林鹿原銘)》も、金の三倍の値がついたという大変貴重な田黄石を使っています。“もったいないのでできるだけ削らない”という制約のなか、自然の情景を緻密に彫りこんでおり、深いオレンジ色も相まってまさに小宇宙を感じさせます」

気品あふれる珠玉の文房具が並ぶ雅の世界を、ぜひ会場でご鑑賞ください。

【開催要項】
文房具の至宝展―机上の小宇宙―
会期:2018年6月23日(土)~7月29日(日)会期中展示替えあり
会場:五島美術館
住所:東京都世田谷区上野毛3-9-25
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
https://www.gotoh-museum.or.jp/
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜(ただし7月16日は開館)、7月17日(火)

取材・文/池田充枝

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