日本文学者・ドナルド・キーン(1922-2019)は、アメリカ合衆国ニューヨーク市に誕生、16歳でコロンビア大学に入学。在学中にアーサー・ウエーリー訳「源氏物語」(2巻版)や日本思想史を教えていた角田柳作との運命的な出会いがあり、日本文学へ高い関心を持つようになります。

その後、海軍日本語学校で学び、太平洋戦争時には語学将校として戦争の悲惨さを目撃します。終戦後は除隊して、コロンビア大学、ハーバート大学の大学院で日本の古典作品を研究、1953年にはケンブリッジ大学での講義をもとにした”Japanese Literature”(『日本の文学』)を刊行します。
1953~1955年の京都大学大学院への留学を経た後は、長らくニューヨークと日本の往復生活を続けていましたが、2011年の東北大震災を機に日本国籍取得を決意し、翌2012年3月に国籍を取得しました。

世田谷文学館で開催の「開館30周年記念 ドナルド・キーン展 Seeds in the Heart」は、キーンの業績とともに日本文学の魅力を伝える展覧会です。(11月15日~2026年3月8日)
本展の見どころを、世田谷文学館の学芸員、原辰吉さんにうかがいました。
「日本文学研究者のドナルド・キーンについて皆さんはどのような印象をお持ちですか。東日本大震災のあと、日本国籍の取得を表明した姿を、テレビなどで見て記憶している方も多いのではないかと思います。
キーン先生の人生は日本語・日本文学とともにありました。青年時代の源氏物語との邂逅、従軍時に出会った日本人たち、日本の文壇との華やかな交流、ライフワークとなった「日本文学史」。展覧会では、その生涯と仕事を紹介し、キーン先生の目を通して、古典から現代文学まで、日本文学を再発見できる場を目指しています。


キーン先生と交流のあった人々はみな「ユーモアがあり、親しみやすい人」と口をそろえて言っています。展覧会では日々の生活の様子も紹介。その人柄に親しんでいただけると思います。

会期中は日本文学や伝統芸能に関連したイベントも企画しています。ぜひチェックしてみてください」
キーン先生がいかに日本を愛したかを再認識する展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
開館30周年記念 ドナルド・キーン展 Seeds in the Heart
会期:2025年11月15日(土)~2026年3月8日(日)
会場:世田谷文学館
住所:東京都世田谷区南烏山1-10-10
電話:03・5374・9111
公式サイト:https://www.setabun.or.jp/
開館時間:10時~18時(入場とミュージアムショップは17時30分まで)
休館日:月曜日(ただし祝・休日の場合は開館し、翌平日休館)、12月29日~1月3日
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝










