来年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公のモデルは紫式部。世界最古といわれる長編小説の作者が女性であり、平安朝廷の閉ざされた世界の中で書き続けたことに驚嘆と敬意を抱きます。日本で最初に職業作家となった女性といわれる樋口一葉は、「源氏物語」を愛読し、初期の小説のモチーフにしています。
しかし、日本が誇るこの小説を全編読んだ人は意外と少ないのではないでしょうか。古来、平安時代の古語で書かれた「源氏物語」を、その時代の言語に書き変えて読みやすくする試みが行われてきました。山梨県立文学館の特設展「それぞれの源氏物語」は、近世以降、多くの作家が挑んだ現代語訳の変遷を紹介する展覧会です。(10月28日~12月17日)
本展の見どころを、山梨県立文学館の学芸員、中野和子さんにうかがいました。
「世界最古の長編小説と言われる「源氏物語」は、時代を超えて人々を惹きつけてきました。本展では、与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、瀬戸内寂聴、林望、林真理子など、多彩な作家の手がけた「源氏物語」の現代語訳や「源氏物語」をもとにした創作小説を、その魅力とともに紹介します。
与謝野晶子(1874~1942 歌人)は、少女の頃から「源氏物語」に親しみ、生涯三度の現代語訳を試み、「源氏物語」の普及に大きな功績を残したといわれています。
谷崎潤一郎(1886~1965 小説家)は、『潤一郎訳源氏物語』(1939年~1941年)を刊行しますが、時局の影響で削除や改変を強いられたことから、戦後、全面的に改稿し原本の物語に沿った『潤一郎新訳源氏物語』を刊行しました。
会期中には、林望氏(作家・国文学者)の講演会「『源氏物語』その面白さの秘密」、兵藤裕己氏(学習院大学名誉教授)の講演会「樋口一葉の和歌と『源氏物語』」を開催します。お申し込み、詳細は当館ホームページへ。https://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp/」
田辺聖子版、瀬戸内寂聴版も展示されます。「源氏物語」の世界を満喫できる会場に、ぜひ足をお運びください。
【開催要項】
特設展 それぞれの源氏物語
会期:2023年10月28日(土)~12月17日(土)
会場:山梨県立文学館 展示室C
住所:山梨県甲府市貢川1-5-35
電話:055・235・8080
公式サイト:https://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp/
開館時間:9時~17時(入室は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし11月20日は開館)、11月21日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝