人間の性愛を描いた「春画」は、男女の姿がおおらかに、ユーモアをもって描かれています。江戸時代には「笑い絵」とも呼ばれ、浮世絵の普及とともに、大名から庶民まで貴賤を問わず、男女平等に楽しまれました。

細見美術館で開催の「美しい春画―北斎・歌麿、交歓の競艶―」は、版画・版本の作品に加え、特に1点ものである「肉筆春画」に焦点をあてています。なかでも葛飾北斎の《肉筆浪千鳥》は、1976年にパリで展示されて以来、長らく公開されず、今回、日本の美術館では初の展示となります。

葛飾北斎「肉筆浪千鳥」より(部分)
全12図のうちの第5図 個人蔵 通期展示

本展では、海外から里帰りした約20件を含む精選された約70件が公開されます。(9月7日~11月24日)

展示の見どころを、細見美術館の主任学芸員、伊藤京子さんにうかがいました。

「春画展としては8年ぶりの開催となる今回の展覧会では、北斎や歌麿などの絵師たちが腕を振るった肉筆春画をご紹介します。

今回おすすめしたい作品は、世界で一番古い美術雑誌『国華』に春画作品として初めて紹介された勝川春章の「初宮参図巻(はつみやまいりずかん)」です。これはお見合いから結婚、妊娠・出産、お宮参りに至る様子が春画入りで描かれた風俗絵巻です。

勝川春草「初宮参図巻」(部分)
似鳥美術館蔵 巻替展示

こうした春画絵巻は、かつて親が嫁入り道具の一つとして嫁ぐ娘に贈っていましたが、10m以上ある本作は記録写真の如く、具体的かつ精緻に描かれており、注文主と絵師の熱い想いを感じることができます。

勝川春草「初宮参図巻」(部分)
似鳥美術館蔵 巻替展示 

本作は今春、京都国立博物館で開催された≪特別展 雪舟伝説―「画聖(カリスマ)」の誕生≫にも展示されていたので、「雪舟」と書かれた軸箱に見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。本展では、「軸箱」場面以降の若い夫婦の様々な営み、妻が夢の中で七福神と戯れたことで懐妊する場面など、時にくすっと笑ってしまう春画ならではの展開をお愉しみいただけます」

美人画の巨匠、歌麿の春画も見ものです。ぜひ会場に足をお運びください。

喜多川歌麿「夏夜のたのしみ」(部分)
個人蔵 通期展示

【開催要項】
美しい春画―北斎・歌麿、交歓の競艶―
会期:前期2024年9月7日(土)~10月14日(月・祝)
後期2024年10月16日(水)~11月24日(日)
会場:細見美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
電話:075・752・5555
公式サイト:https://www.emuseum.or.jp
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(祝・休日は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
※18歳未満は入場禁止              

取材・文/池田充枝

 

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