1950年8月26日に公開された映画『羅生門』は、国内では大ヒットにはならなかったものの、黒澤明監督の芸術的な野心が認められ、1951年9月にヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞しました。

さらに1952年3月に米国アカデミー賞名誉賞を受けることで国際的な評価を確立し、黒澤の、ひいては日本映画の水準の高さを世界に知らしめ、戦後復興のひとつの象徴となりました。

公開70周年を記念して、映画『羅生門』を徹底解剖する展覧会が開かれています。(12月6日まで)

劇場公開オリジナルポスター
(C)KADOKAWA 1950 矢田部信和氏蔵

本展では、企画から撮影、公開、世界展開に至るまで、各種の資料によって多角的に迫ります。また、デジタル技術を使った新しい資料展示の可能性にも取り組んでいます。

本展の見どころを、国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則さんにうかがいました。

「羅生門」セットと雨
(C)KADOKAWA 1950  国立映画アーカイブ蔵

「映画『羅生門』展には、企画までの道のり、巨大な羅生門オープンセットの設計、当時の最先端を行く撮影術、黒澤明の盟友だった作曲家早坂文雄の音楽、国内での反響、そしてヴェネチア国際映画祭の金獅子賞受賞に始まる世界への飛躍といった、この映画をめぐる重要なエレメントがぎっしり詰まっています。

アメリカ オリジナル版ロビーカード 槙田寿文氏蔵

とりわけ日本ではその後、歌舞伎に翻案され、アメリカではブロードウェイ演劇になり、ハリウッドでリメイクもされた『羅生門』は、いかに巧みな脚本構造を持っているかを示しています。

一つの出来事に複数の異なる証言がなされて、事実が見えなくなってしまうことを英語圏では『羅生門効果』というほど、この作品は映画を超えた一般的な語彙になっているのです。

野上照代の撮影台本 野上照代氏蔵

今回の最大の見どころは、撮影の宮川一夫、記録の野上照代の両氏が使用した書き込み入りの台本を、実際の作品の映像と照らし合わせて分析したデジタル展示です。情報技術企業の協力を得て、マウスもタッチパネルも使うことなく、非接触で貴重な資料が見られるようになっています。また、野上氏や録音助手の紅谷愃一氏といったご存命のスタッフの最新インタビューも見逃せないでしょう 」

スタジオ撮影スチル写真
(C)KADOKAWA 1950  株式会社KADOKAWA蔵

世界の黒澤、巨匠黒澤明監督 の仕事を丁寧に読み解く本展に、ぜひ足をお運びください。

【開催要項】
公開70周年記念 映画『羅生門』展  
会期:2020年9月12日(土)~12月6日(日)
会場:国立映画アーカイブ 展示室(7階)
住所:東京都中央区京橋3-7-6 
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/rashomon2020
開室時間:11時から18時30分まで(入室は18時まで)
休室日:月曜日
料金:HP参照
アクセス:HP参照
巡回:京都府京都文化博物館(2021年2月6日~3月14日)

取材・文/池田充枝

 

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