近年、日本では少子高齢化により労働に従事できる人口が減少しているため、企業の人手不足問題が深刻化しています。人手不足が原因で倒産する企業は、2019年だけで185件も発生しており、4年連続で過去最多を更新する結果となりました。そんな中、シニアを活用することで人手不足の改善を狙う企業が増えています。
そこで日本法人ソノヴァ・ジャパン株式会社(https://www.phonak.com/jp/ja)は、50~70代の働く男女400人に「働くシニアと聞こえに関するアンケート調査」を実施しました。早速どのような結果が出てきたのか、見ていきましょう。
■シニア世代が労働人口を下支えしている実態が浮き彫りに
総務省統計局は、働くシニアについてのレポートを公開しており、それによると65歳以上の高齢就業者数は年々増加しています。2018年では、862万人のシニアが就業しており、働いている人の10人に1人以上はシニアが占めています。また年齢別で見ると、65~69歳の就業率は約50%となっており、約半数の人が65歳を超えても働いていることが分かります。つまり、定年の時期を迎えても70歳までは「働くことが当たり前」な世の中になりつつあります。
※「人手不足倒産の動向調査」(帝国データバンク 2020年)
■シニア世代が描く「格好いいシニア」の姿とは?
働くシニアが若手社員にどのようなイメージを持たれたいかを調査したところ、一番多かった回答は「物事を客観視できる人格者(41.5%)」となりました。次いで「仕事についてなんでも知っている(36.0%)」が挙がっており、やはり年の功を感じてもらいたいと期待する方が多いようです。
また「相談に乗ってもらいやすい(35.0%) 」、「周囲とのコミュニケーションを取るのが上手く頼りになる(34.5%)」といった項目も多くの回答を得ており、コミュニケーションが取りやすい関係性を望んでいる傾向にあることも分かりました。
逆に若手社員に持たれたくないイメージについて調査すると、「話かけづらい(52.5%)」、「話が通じにくい(50.0%)」、「過去の経験や考え方に固執している(44.0%)」への回答が多くなっています。
また、このようなイメージを持たれてしまう原因として、「若手社員の意見をあまり聞き入れないから(44.5%)」、「フランクに話せていないから(41.8%)」、「新しいことにチャレンジしていないから(29.5%)」といった項目が上位に挙がっています。
これらの結果から、現代の働くシニアは、コミュニケーションが取りづらく、かつ新しいものを取り入れる柔軟性が無いシニアにはなりたくないと考える傾向が見受けられます。
一昔前までの日本では、威厳を持ち、伝統を受け継ぐことが美学とされていましたが、時代の変化とともに考え方も変化してきていることを示唆する結果となりました。現代社会では、若手社員よりも働くシニアの方が、コミュニケーションに気を遣っているのかもしれません。
■60代男性の4人に1人は、若手社員との会話に「抵抗あり」若手社員は「分かりやすい言葉」を使って話すことを意識すべき!
若手社員とのコミュニケーションを重要視する傾向にある働くシニア。今度は、若手社員と話すことに抵抗があるかを質問してみたところ、80%以上が「ない」と回答する結果となりました。
また男女・性別に分けて結果を見たところ、女性では歳を重ねるごとに抵抗が無くなっていくことが分かります。特に70代女性では、95%が抵抗がないと回答しています。男性の場合、女性よりも「抵抗がある」と感じる人が多い傾向となっており、60代では4人に1人が抵抗があると回答しています。60代男性と言えば、定年がきっかけで、これまでの役職から離れることが多くなります。昨日の部下が明日の上司といった状況を招くため、抵抗を感じる人が増えるのかもしれません。
■気遣いのできるシニア世代が、若手社員に望むのも気遣いか?
若手社員とのコミュニケーションに抵抗がない中でも、実際に話をする際は、若手社員に求めていることがありました。若手社員と話す際に求めることについて年齢別に調査したところ、全世代で最も多かったのが「分かりやすい言葉で話してほしい」でした。
他項目と比較しても群を抜いて多くなっており、年齢が上がるとともに割合も増加する結果となっています。最近では、ビジネス・プライベートともに横文字や若者言葉が非常に多く使われています。横文字はともかく、若者言葉に慣れていないシニアは、全てを一度に理解することは難しいでしょう。また「大きな声ではっきりと話してほしい」、「ゆっくり話して欲しい」といった聞こえの変化による項目を選ぶシニアも一定数存在していました。
若手社員は、こういった点を考慮して、シニア社員とコミュニケーションを取ることで、良好な関係性を保ち、仕事を円滑に進めることができそうです。
■聴力の変化で仕事にストレスを感じている人は9割以上!若手社員は聞こえやすさを意識することで、シニア社員のイライラを軽減できることも?
「大きな声ではっきりと話してほしい」、「ゆっくり話して欲しい」といった、聞こえの変化からくる項目に回答する働くシニアも多く存在していました。そこで実際に聴力の変化を感じているかどうかを伺ったところ、70代の約60%が聞こえづらさを感じていることが分かります。また50代でも4人に1人が聞こえづらさを感じており、一定数存在していることが明らかになりました。歳を重ねるごとに、聞こえの変化が発生することは多くの方が目の当たりにすることであり、早めのケアが必要となってきます。
「聞こえづらくなった」、「どちらかと言うと、聞こえづらくなった」と回答した人に、聴力の変化によって仕事中にストレスを感じているかどうかを調査したところ、「全く感じない」と回答した人はわずか9%となっており、91%が何らかのストレスを感じている結果となりました。また「感じる」と回答した人に対して、そのストレスが原因で機嫌が悪くなったり、むしゃくしゃすることがあるかを伺ったところ、約60%が「ある」と回答しています。
つまり、聴力の変化によるストレスが、機嫌やむしゃくしゃに繋がることも少なからずあることが明らかになりました。若手社員は、会議や仕事の相談をする際、普段よりも大きくはっきり、ゆっくりと話すことで、シニア社員のイライラを軽減することができるかもしれません。
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働くシニアが若手社員に持たれたくないイメージとして、「話しかけづらい」と回答した人が一番多いことが分かりました。働くシニアの中には、聴力変化によって起こるコミュニケーション上の問題が原因で、仕事にストレスを抱えてしまい、それがイライラに繋がり、知らず知らずのうちに、「話かけづらい」といった印象を与えてしまっている人が少なくないかもしれません。わずかでも聴力に違和感を感じたら、耳鼻咽喉科を受診することも必要かもしれませんね。これは、若手社員にとって頼りがいのある先輩社員として働き続ける鍵にもなるでしょう。
【アンケート概要】
・調査主体 :ソノヴァ・ジャパン株式会社(第三者機関調べ)
・調査期間 :2020年4月25日(土)~26日(日)
・調査対象者:50〜70代の働く男女(性年代均等割付)
・調査対象地域 :東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府・福岡県
・調査方法 :ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析
・有効回答数 :400人