マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、ビジネスの現場でできるシニア世代のメンタルヘルスについて考察します。

人生100年時代と言われる中、70歳までの定年延長や継続雇用制度の導入、役職定年の撤廃などの人事制度が加速し、今やシニア世代は企業にとっても戦力として欠かせない存在になっています。一方で、働く側の立場では年齢とともに変わる職場環境やストレスに悩むこともあるのではないでしょうか?

本記事では、ワークライフバランスの確立と仕事の効率化というテーマで、自身のメンタルヘルス向上の手段についてお伝えします。

ワークライフバランスの確立と仕事の効率化

シニア世代は企業の中において、部下を持つリーダーの方も多いことでしょう。担う責任は重く、上司や経営層からは成果を求められると共に、部下の育成や部下の「働き方」を考慮するあまり、自身の業務量が増え、時には仕事とプライベートの両立が難しく、時間の使い方にストレスを感じることもあるでしょう。

そんな時におすすめする環境整備と仕組化は次の3点です。

1:部下のプロセスまで管理しようとしない

「手取り足取り部下の面倒を見てあげるのがよい上司だ」という風潮もありますが、部下の仕事のやり方、プロセスまで管理しようとすることは、部下の成長を阻害する要因になるばかりでなく、上司側のマネジメントコストが膨れ上がっていってしまいます。

あなたのプロセスに対する細かな助言や指示通り部下が動いたとして、その仕事がうまくいったとき、いかなかったとき、それぞれ部下はどのような意識になる可能性があるでしょうか。

・うまくいったとき:
「また次も上司に細かな助言や指示をもらおう」

このような意識になってしまうと部下は自分で考えることを放棄し、いわゆる指示待ち人間になってしまいます。本来部下が考えるべき領域まで上司が考えてあげないと動けない部下の出来上がりです。

・うまくいかなかったとき:
「悪かったのは上司の助言や指示であり、言われた通りやった自分の責任ではない」

このような意識になってしまうと、部下は与えられた役割に対し自責で捉えることができず、不足している能力を自分で埋めようという意識にならず、成長を阻害してしまいます。

そして、自身が成果を出し、組織の中で評価されるほど、組織内での自身の管掌責任範囲は拡大していき、管理する部下の人数も増えていきます。

部下の人数が少ないうちは、手取り足取りプロセスに口を出せていたかもしれませんが、人数が増えてくると時間の制約上、全員のプロセスを管理するのが困難になっていきます。それでも良かれと思って全員のプロセスまで管理しようとすると、本来の自身の役割をこなすための時間が圧迫されるばかりか、ワークライフバランスの不均衡を発生させる要因となってしまいます。

ですから、部下のプロセスは管理せず、期限と状態を示して、期限を迎えたときに報告してもらうという管理方法に変化させていきましょう。

2:ルール設定を行う

ルール設定にも2種類あります。一つ目は「自身とのルール設定」、二つ目は「職場内のルール設定」です。

「自身とのルール設定」の例は……
・入浴後は社用携帯やメールチェックを行わない
・休日になんとなく仕事をしない。やむを得ずする場合は休日出勤申請を行い、業務時間として集中力を持って仕事する。
などが挙げられます。

人は「物理上には家庭にいても、意識上は職場にいる」ということが可能な生き物です。当然、意識上ずっと職場にいては疲弊してしまいますし、物理的に帰宅していても意識上帰宅していなければ心も体も休まりません。仕事を遂行する上で集中力が大切ですが、集中力を維持するためにも休息が必要なことは言うまでもありません。

ただ、言うのは簡単なのですが、物理上と意識上の錯覚に常に自覚的でいられるわけでもありません。そこで、自身とのルール設定を行うことをおすすめします。「お風呂に入ったらもう仕事のことは考えない」、これも立派な仕組み化です。

「職場内のルール設定」の例は……
・業務時間外の連絡の返信期限は翌営業日〇時までとする
・〇時以降社外で業務を行った場合は直帰を可とする
などが挙げられます。

ご自身でルールを設定する権限がない場合は上司に上申してみましょう。このようなルールが明確になっていることで、「もう定時過ぎたけど〇〇さんから連絡が来ている、急ぎなのかな? 自分も残業して早めに返してあげたほうがいいかな?」といった迷いや不要な残業もなくなります。依頼している〇〇さん側も同様のルールを認識することで、当日中に返しが欲しい案件であれば〇〇さんの責任において業務時間内に連絡する事が求められますし、業務時間外の連絡を業務時間外に返して欲しいということを望まなくなります。

双方が「業務時間外の連絡だから返しは翌営業日の〇時で良い」と認識することで不要なストレス、不要な残業が軽減されます。直帰のルールも同様です。明確になっていることで、「一旦、会社に戻った方が周囲の印象が良いかな? 今から戻っても移動時間の都合で残業することになってしまうけど」といった迷いや不要な残業を軽減できます。

3:指示命令系統を明確にする

業務効率を低下させる要因に、指示命令系統のあいまいさがあります。様々な部署から依頼が舞い込んだり、直属の上司からもさらにその上の上司からも指示命令がなされる組織は要注意です。

まず、直属の事実としての上司の他に、意識上の上司が複数存在している状況では、違う指示が同じタイミングで来た時に、どちらを優先してよいか判断がつかず、迷いと時間のロスが発生します。また、「Aさんからは承認をもらったけど、Bさんからは保留の回答だった。この案件は進めてよいのだろうか?」とやはり迷いと時間のロスが生じてしまいます。

同様に、過剰なマルチタスクも要注意です。日々のタスクは優先順位を決めて一つ一つ消化していく方が効率は良いのですが、過剰なマルチタスク状態になってしまうと、Aというタスクが完了する前にBという緊急性の高いタスクが舞い込み、Bというタスクを完了させる前にCというより緊急性が高いタスクが舞い込んだ、といったことが起きてしまいます。

この状態では、Cを完了させ、Bに戻り、Bを完了させ、Aに戻るという順番でタスクを消化していくことになりますが、「戻る」という作業の際に、必ず中途まで進行してたタスクの、前回終了時点ではなく、前回終了時点の少し手前の状態まで戻ることになるからです。

私たちの日常生活においても、途中まで読み進めていた書籍の続きを読む際に、前回読んだ最後の1文字の次の文字から読み出す人は少ないはずです。必ず少し前から読み直します。映画も同様ですね。

この小さなロスの積み重ねが業務効率を落とし、ワークライフバランスを損なう要因になります。もし、上記のような状況になってしまっている場合は、指示命令系統を見直すか、見直すように上司に上申しましょう。

幸福で健康に価値を発揮し続けるために

上記は組織マネジメント上の処方箋の一例ですが、みなさんのメンタルヘルスが向上するよう、ご自身の職場環境と照らし合わせて、改善の参考にしてみてください。

近年では「幸福」についての学術的研究も目覚ましい成果を上げ、Well-beingに関する情報や書籍も充実しています。ご興味のある方は是非一度触れてみることをおすすめします。何が自身の幸福に寄与するのか学び、自分の成長と幸福を追求することで、組織人として個人として充実した人生100年時代を歩むことの一助になりましたら幸いです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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