マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、シニア社員を雇用することのメリットと注意点を解説します。
少子化に伴い今後の労働力人口に大きな影響がでると懸念されています。厚生労働省の調査によると人口は2018年1億2,644万人から2065年に8,808万となり、高齢化比率は、2018年の28.1%から2065年は38.4%になると予測されています。
今回は、労働力不足をカバーしていくことになるシニア社員の雇用についてと、社内でのマネジメント方法を紹介します。
シニア社員の雇用メリットと注意点
メリット1:労働力の確保
この1年、各企業とも人材採用が一番の課題だとご相談をお受けすることが多くなりました。その中で新卒、中途採用だけにかかわらずに、シニア社員の採用を強化することで労働不足を補う会社もあります。上手くいくか不安だからシニア社員は採用しない、ではなく、シニア社員の活躍できる会社にするためにどのような取り組みができるかを決断して修正していくことが労働力不足解消の第一歩となります。
メリット2:経験と知識のノウハウ化
シニア社員は数十年社会人として仕事をしてきた経験と知識を持っています。
例えば、下記のようなことが考えられます。
・取引したい会社のキーパーソンを知っている。接点を持っている。
・自社にはない技術力や専門的な知識を持っている。
・経験値を生かして既存の会社の仕組みを比較、分析する事ができる。
・中堅、若手社員の育成を任せることができる。
・社内に若手、中堅、シニアと幅広い年代の人材がいる事でダイバーシティを実現できる。
メリット3:助成金を活用できる
厚生労働省は、高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現するため、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成しています。
上手く助成金を活用することでコストを軽減しながら、労働力不足を解消することができるでしょう。
65歳超継続雇用促進コース:65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主に対して助成するコース
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース:高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主に対して助成するコース
高年齢者無期雇用転換コース:50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業に対して助成するコース
参考:厚生労働省 65歳超雇用推進助成金 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html
注意点
シニア社員は20代~40代の頃と比べると体力、健康面において不安を持っている方もいます。社内での勤務時間や休暇の日数等社内のルール整備を整える必要があるでしょう。
既存の社員の方より年齢が上、会社の代表よりも年齢が上の方が入社する場合もあるかと思います。シニア社員に限らずではありますが、社員同士の接し方、言葉遣い等のルールを修正する必要があります。気を遣いすぎて指示を出しづらい等にならないよう、また経験を重ねてきた方に失礼のある言動により感情的な衝突にならないように対応が必要です。
シニア社員の役割と結果責任を明確にする
識学では尺度という理論があります。人の持つ「経験+知識」の和を識学では尺度と名前をつけており、上下関係がない中でも話のテーマにおける「知識+経験」尺度の大きい方が意識上、上の位置に立つというものです。シニア社員は年齢が高い分、周りの社員より尺度が高くなることがあるため、気を遣ってシニア社員への指示ができない、指示が曖昧になる等の不具合が発生することがあります。
そうならないためには、プロジェクトメンバーの役割を明確にする必要があります。リーダーは、プロジェクトの責任を負う代わりに必要な権限が付与されます。意見が割れたときには責任を持つリーダーが意思決定をするという役割を明確にして、メンバー内で認識を合わせてプロジェクトをスタートしましょう。
状況によってはシニア社員が役割・責任・権限を誤解してしまい、リーダーでもないのにリーダーのようにふるまってしまう危険性があります。
リーダーは、プロジェクトメンバーが年上であろうが年下であろうが関係なく、指示を明確に出す必要があります。気を遣いすぎて「〇〇してもらえませんか?」という表現はNGです。「〇〇してもらえませんか?」という表現は、相手に選択権を与えることになり、指示を実行するかどうかを相手に委ねることになります。リーダーが実行して欲しいことをメンバーが吟味して、結果的に実行しなければプロジェクトの進捗が滞ります。
また、シニア社員に対しても役割上どんな結果を出す必要があるかを明確にしましょう。
「〇〇さんの知識と経験を生かして気になることはアドバイスをしてください」等の曖昧な状況でスタートすると、シニア社員がただの評論家になってしまう可能性があります。
プロジェクトのメンバーとして、どんな役割を担い、どんな結果責任を持つのかを明確にすることが重要です。
シニア社員にリーダーを任せるときの注意点
すべてのシニア社員に該当するわけではありませんが、私の経験上、シニア社員は年齢とともに話が長くなってしまう、記憶する能力が落ちていく傾向があることを見てきました。
シニア社員にプロジェクトのリーダーを任せる場合は、決定事項を記録する担当を作り、定期的に決定事項を周知するルールを設定する、会議等では話のテーマが逸れた場合には話を元のテーマに戻せるような司会進行役を決める、発言は〇分以内などのルールを設定して運用することも検討されると良いでしょう。
このようなルールの基でプロジェクトを任せれば、シニア社員はリーダーとして素晴らしい結果を出してくれるはずです。
まとめ
シニア社員は言うまでもなく知識や経験豊富な存在です。中には数多くのプロジェクトでリーダーシップを発揮してきた方もいます。その経験を生かしてリーダーを任せることで、プロジェクトを円滑に回すことも可能です。シニア社員の特徴を理解した上で、シニア社員が豊富な経験を会社の発展のために発揮して、活躍できるような仕組み作りを是非ご検討ください。
識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/