取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、兵庫県内で旦那さまとの2人暮らしをしながら、外食向けの卸業を行う会社で働いている郁恵さん(仮名・38歳)。京都府の出身で、両親との4歳上に兄のいる4人家族。家族仲も良く、過干渉でもない両親はなぜか異性関係の話題だけタブー。そのことを確かめることができないまま30歳手前になり、当時付き合っていた男性と結婚を決めます。初めて付き合っている男性を紹介した時はとても緊張したと言います。
「もしかしたら、彼よりも私のほうが緊張していたのかもしれません。反対されたらどうしようと、悪いほうにばっかり考えていましたが、結果はあっさり。一度も会話に出なかった結婚について、本当はしてほしかったんだという親の思いが見えた気がしました」
精神的な結びつきに固執していたのは両親ではなく私
結婚後も電車で2時間弱の時間をかけて、頻繁に実家に通っていたという郁恵さん。新婚生活は、想像以上に孤独だったと当時を振り返ります。
「今までずっと両親がいる生活の中で、代わりに夫はいましたが、元々ずっと一緒にいたいというタイプじゃなく、個人の時間も大切にという考え方だったから、1人ぼっちの時間がすごく増えたんです。それに夫は残業が多い仕事で、私は定時で帰れるところで、退社以降が本当に毎日寂しくて気が狂いそうでした」
初めて親元を離れたことで、今まではなかった母親との電話連絡を頻繁にするようになります。そして、その頻度は徐々に増え、付き合っている頃から夫との時間にあてていたはずの週末さえも帰省するように。そのことがきっかけになったのか、夫との結婚生活は2年に満たずに終わることになります。
「夫とは話し合いで別れました。すがることはできたけど、なんとなく一緒に暮らすようになって人生のペースが違うなって思うところもあったから。私は終始冷静で、夫はやや興奮していたのか、『その歳で親離れできていなさ過ぎて怖い』という捨て台詞をいただきましたね……。そこで初めて、私は親離れできていないかのかもと思うようになって。経済的には就職してからずっと自立していますが、精神的な面でです。両親は絶対に私を拒否しないという安心感をもらえていて、その絆を他人と作りたいなんて思いもしなかったから」
【親を心配することが悪いわけはない。次ページに続きます】