文/川口陽海
・自宅で腰痛や坐骨神経痛を改善することは十分可能
・とくに効果的なのが“殿筋ほぐし”
・テニスボールなどを使って発痛点“トリガーポイント”をほぐすことが効果的
この記事を執筆している3月下旬時点では、新型コロナウィルスの流行により、東京都と関東近県において、週末などの外出を自粛するよう要望が出されました。
記事が公開された現在はどのような状況になっているでしょうか?
腰痛や坐骨神経痛でお悩みの皆さんは、思うように治療も受けられず、つらい思いをしていませんか?
でも大丈夫!
自宅で腰痛や坐骨神経痛を改善することは十分可能です。
むしろ人任せにせず、自ら治していこうという姿勢こそが、痛みから回復への早道だと筆者は考えています。
今回は自宅で、自分でできる、腰痛や坐骨神経痛の改善法“殿筋ほぐし”をお伝えします。
殿筋と発痛点“トリガーポイント”
殿筋とはお尻の筋肉のことで、大殿筋、中殿筋、小殿筋の3つの筋肉があります。
殿筋に限りませんが、筋肉は疲労や運動不足、長時間の同一姿勢など、様々な原因によりこり固まってしまうことがあります。
これが長期間続くと、筋肉の中に発痛点“トリガーポイント”ができてしまい、そこから強い痛みやしびれなどの症状がおこることがあります。
この“トリガーポイント”が、腰痛や坐骨神経痛の大きな原因となります。
トリガーポイントについては本連載でもたびたび触れていますが、より詳しくお知りになりたい方は以下のページもご覧ください。
ポイントは中殿筋と小殿筋
殿筋の中でも、腰痛や坐骨神経痛の原因となることが多いのが中殿筋と小殿筋です。
以下の画像は、中殿筋小殿筋とトリガーポイントの好発部位、またトリガーポイントから痛みの出るエリアをあらわしています。
【中殿筋とトリガーポイントの好発部位】
画像の一番右が中殿筋の解剖透視図です。
図の✖印がトリガーポイントの好発部位で、赤い部分が痛みの出やすいエリアになります。
中殿筋にトリガーポイントができると、この図のように腰や骨盤周り、ベルトのラインあたり、お尻のほっぺたなどに痛みが出ます。
【小殿筋とトリガーポイントの好発部位】
画像の一番右と右から3番目が小殿筋の解剖透視図です。
図の✖印がトリガーポイントの好発部位で、赤い部分が痛みの出やすいエリアになります。
小殿筋にトリガーポイントができると、この図のようにお尻から脚の後ろ側や外側にかけて痛みやしびれが出ます。
このような症状は、病院ではたいてい坐骨神経痛と診断されますが、実は神経の痛みではなく、筋肉の痛みなのです。
いかがでしょう? これらの図はあなたの痛みと似ていませんか?
もし似ているようでしたら“殿筋ほぐし”が効果があるかもしれません。
実際にやってみましょう。
テニスボールで殿筋をほぐす
テニスボールでほぐす方法は、テレビや雑誌などのメディアでも取り上げられることが増えていますので、ご存知の方も多いと思いますが、うまく効果を出すにはいくつかポイントがあります。
1.ボールを当てる場所
2.ボールの当て方
3.ほぐす時間
4.ほぐした時の感覚
それぞれについて詳しく解説していきますので、実際にやってみましょう。
※硬式テニスボールをひとつご用意ください。
1.ボールを当てる場所
今回とくにねらいたいのは中殿筋と小殿筋です。
次の図を参考に、大まかな場所を覚えましょう。
図は殿部を後ろから見たところです。テニスボールマークの部分が当てたい場所です。
一番上の赤い線が、だいたいベルトのラインくらい、一番下の赤い線がお尻の下のライン、真ん中の線がその中間です。
当てたい場所は、おおよそ中間ラインより上の部分となります。
痛みのある側を中心にほぐしますが、反対側もある程度ほぐした方が良いと思います。
注意)実際に使うボールはひとつだけです。
2.ボールの当て方
ボールの当て方には少しコツがあります。
お尻のあたりにボールを当てようとすると、つい腰を持ち上げて上から乗っかってしまうかもしれませんが、この方法だといきなり強い刺激がかかりますので、あまりおすすめできません。
下の画像のように身体を傾けるようにして、ゆっくりとボールに体重を乗せるようにしましょう。
そして息を吐いて身体の力を抜いていきます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
多少痛みがあったりすると、つい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうすると筋肉が固まってうまくほぐれません。
あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。
グリグリと転がすように刺激するのは、痛みがある時にやると逆に痛みが増したりしますので、やらないようにしましょう。
また、ちょっとした位置やボールを当てる角度により効く感じが変わると思いますので、「どのへんが効くかな?」とボールを細かくずらしながら探してみてください。
3.ほぐす時間
テニスボールでほぐすのは、どのくらいの時間が適しているのでしょうか?
筆者の腰痛トレーニング研究所で、このテニスボールほぐしを指導する時は、
◎1か所10~20秒程度
◎全体でも5~15分程度
くらいから始めることをお勧めしています。
あまり長い時間おこなうと、その後で、または翌日などにかえって痛みが増したりしますので、はじめは短時間でおこなって様子をみてください。
短時間おこなって大丈夫なようでしたら、少しずつ時間を伸ばしてみましょう。
痛みが残ったり、あとで痛みが増したりするようなら、刺激のしかたが強すぎるか時間が長すぎますので加減してください。
4.ほぐした時の感覚
ほぐしている時に
『痛気持ちいい』
『ジーンと効く感じ』
『ツボを押されている感覚』
などがある。
またほぐした後に、
『軽くなる感じ』
『すっきりする感じ』
『ホカホカする感じ』
『じわっと血が巡る感じ』
など良い感じがある。
このような感覚があれば効果があります。
逆に
◆ほぐしている時に『すごく痛い』『嫌な感じや不快感』などがある
◆ほぐした後に痛みが残ったり、痛みが増したりする
このような場合は、うまくできていないか、またはテニスボールでほぐすのは適していないと思われますので、やめておきましょう。
また、拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて3月20日から発売となっています。
こちらでも腰痛を改善する方法を多数ご紹介しておりますので、お読みいただけると幸いです。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
【腰痛・坐骨神経痛】痛みがある時に運動しても大丈夫? しない方が良い?【川口陽海の腰痛改善教室 第36回】
腰痛・坐骨神経痛を改善する歩き方とは?【川口陽海の腰痛改善教室 第35回】
腰痛・坐骨神経痛を解消!腰やお尻の痛みを治す“殿筋ストレッチ”!【川口陽海の腰痛改善教室 第33回】
慢性腰痛を改善!誰でも簡単にできて効果的な6つのストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第21回】
文・指導/川口陽海
厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616
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