文/石川真禧照(自動車生活探険家)
流行りの形ではない。しかし正統にして基本の形「セダン」こそ、本当の意味で使い勝手のよい車ではないだろうか。マツダのセダンに乗ると、車の原点に立ち返ることの大切さを思わずにいられない。
車を購入するときに、どのようなことを重視しているだろうか。
評判、形、燃費、車両価格、税金、販売店のことも気になる。だが、売れている、燃費がいいと聞いて購入を決めたけれど、実際に乗ってみると使い勝手がいまひとつ……という声も耳にする。
SUV(多目的スポーツ車)や5ドア・ハッチバック式の車を選ぶ人は多いが、使い勝手は本当によいのだろうか。こうした車には、乗降用のドアのほかに、車体後部に荷物などの出し入れ用の大型ドアがある。荷室の高さも高く、大きな荷物を積む機会の多い人には便利だろう。しかし、そのような機会は実はそう多くない。逆に使い勝手が悪い点もある。後部の大型ドアを開けると、夏は室内の冷気、冬は暖かい室温が一気に放出されてしまい、室内が外気温と同じになってしまうのである。
セダンを見直す
マツダの「マツダ3(スリー)」は小型車「アクセラ」の進化形だ。名前と性能を一新した新型車である。マツダ3には、後部に大型ドアを持つ5ドア仕様「ファストバック」と、荷室と乗員室が独立した4ドアの「セダン」がある。その双方に試乗した結果、セダンの使い勝手のよさを再認識させられた。
ちなみに最近新型を発売したトヨタ/カローラは、セダンと5ドア・ハッチバックのほかに、ステーションワゴンも用意されている。しかしステーションワゴンを自家用車として選ぶ人の多くは、おそらく形のよさで選択しているのではないか。だとすれば、もはや“趣味の車形”といえるだろう。
ではなぜ、4ドアのセダンこそ、使い勝手がよい車だといえるのか。
現代的に生まれ変わった使い勝手のよい正統派セダン
4ドアセダンのよさとは、まず、安全性である。後部の荷室(トランクルーム)部分が独立した箱になっているので、追突されたときクッションになり、衝撃の吸収性能が高い。
そして、収納性能。マツダ3は、荷室の奥行き、左右幅、高さともに充分に確保されていて、ゴルフバッグを例にとるなら、3~4個を収納可能である。後席側に荷崩れする心配もないし、むしろ5ドア車よりも広く使えると感じる。最近のほとんどのセダンと同様に、後席の背もたれ部分を前に倒すことができ、後席・荷室をつなげて長尺物を積むことも可能だ。
荷室と乗員室の分割は、快適性にもつながる。荷物の臭いが室内に侵入しにくいし、発車前に荷物の出し入れをする場合でも、室内は静かに保たれ、快適である。
安全性能もトップレベルだ。前方の車・歩行者・自転車や左右・後方に接近する車を検知し衝突を防ぐ。対向車が近づくとヘッドライトの照射範囲を自動調整する。ペダルの踏み間違いによる急発進などのうっかり事故も防いでくれる。
4ドアセダンは今も昔も“車の基本形”である。その最進化形、マツダ3の完成度は高い。
【マツダ/マツダ3 セダン 20S Lパッケージ】
全長× 全幅× 全高:4660×1795×1445mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1350kg
エンジン:直列4気筒DOHC/2.0L
最高出力:156PS/6000rpm
最大トルク:20.3㎏-m/4000rpm
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:15.8㎞/L(WLTCモード 市街地12.9㎞/L)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 51L
ミッション形式:6速自動変速機
サスペンション:前/ストラット式 後/トーションビーム式
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員:5名
車両価格:269万8055円(消費税込み)
問い合わせ:コールセンター 0120・386・919
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年12月号より転載しました。