実家の表具店で、職人たちの働きを幼いころから見てきたという小林新也氏は、ものづくりを追求する彼らの姿に惚れ込んでいた。やがてデザインスタジオ「シーラカンス食堂」を立ち上げた後、次世代の職人を育成すべく刃物工房を設立。日本が世界に誇れるナイフを目指し、熟練職人や若き職人とともにつくり上げたのが、この『富士山ナイフ』である。
形状は、日本に昔からある折り畳み式のナイフをベースにし、刃には安来鋼白紙2号という高価な鋼を使用。よい刃の条件である「硬い」「研ぎやすい」「長切れする」の三拍子がそろう。鞘は真鍮で、側面は鏡面仕上げ、表面をマットな質感に仕上げることで、高級感を醸し出している。
刃の一部を富士山に見立て、鞘には三保の松原を描いた、浮世絵のような格調高い模様も魅力。じつは、この装飾にアッと驚く秘密が隠されている。
「富士山の頂上部分が刃を引き出すつまみになったり、景色の一部がボトルオープナーになるなど、機能性と融合した意匠を施しました」(小林氏)
使い続けて経年変化を楽しむもよし、真鍮を食器用クレンザーで磨いて元の輝きを保つもよし。好みの表情に整えながら、長年の相棒として手もとに置いておきたいハンサムなナイフである。
【今日の逸品】
富士山ナイフ ―Fuji Knife―
シーラカンス食堂
4,078円(消費税8%込み)