電源スイッチを入れると、真空管にほのかなオレンジ色が灯った。
「懐かしいなぁ。昔はラジオもテレビも真空管だったからね」
そういいながら、CDトレイに音盤をセットするのは、テレビの『笑点』(日本テレビ系列)でもおなじみの落語家、三遊亭小遊三師匠である。師匠が使っているのは、真空管アンプとCDプレーヤーが一体となり、スピーカーも付属する、コンパクトサイズのコンポーネントステレオである。
まず師匠がかけたのは「モダンジャズの父」ともいわれるチャーリー・パーカーのベスト盤だ。師匠自身も仲間とディキシーランド・ジャズのバンドを組みトランペットを担当している。
「やや? さっきに比べて、音がまろやかになってきましたよ。トランペットで参加しているディジー・ガレスピーの高音がより心地よく聴こえてきます」
じつは、そこが真空管コンポの真骨頂。電源を入れてから時間が経つほどに音の温かみが増し、熟成が進んだウイスキーのようなまろやかさを湛えてくる。それでいて音の解像度はしっかり保っている。バックのベースの弦の音もハッキリ聴きわけられる。
次に手にしたのは、昭和歌謡が100曲も入ったボックスセット。
「いしだあゆみ(『ブルー・ライト・ヨコハマ』)の歌声も、今聴くと艶っぽいね。『美空ひばり昭和のうた』のCDもいいねえ。美空ひばりの歌唱力は誰もが認めるところだけど、いまこのステレオで聴くとこんなに歌が上手だったんだと改めて感服しました」
■人の声が明瞭に届く
本体前面操作パネルは日本語表示で、スイッチ類にレバー式を用いるなど、オーディオに詳しくない人でもすぐに使いこなせる。アナログな外観だが、USB端子を装備しているので、フラッシュメモリに入れた音楽も、真空管アンプ独特のふくよかなサウンドで聴くことができる。また、RCAケーブルを用いれば、スマートフォンや携帯音楽プレーヤーに入れている曲も再生できる。
真空管のアンプは高級機に使われることが多いが、CDプレーヤーとスピーカーが付属して10万円を切る価格も魅力だ。
「とくに人の声が明瞭に届くので、落語のCDを聴くのに最高ですよ。といっても自分の落語はかけませんよ。カミさんにうるさいといわれますので」(笑)
商品名/真空管コンポーネントステレオ
メーカー名/日本コロムビア
価 格(消費税8%込み)/真空管コンポーネントステレオ=97,200円、交換用真空管3本組み=5,400円