文/川口陽海
筆者は長年腰痛・坐骨神経痛の治療に携わっていますが、時々患者さんから思いもよらない腰痛解消法をうかがうことがあります。
その多くは、残念ながらその患者さん自身にしか効果がないようなことがほとんどなのですが、中には他の患者さんでも再現性がある方法を発見することがあります。
今回ご紹介する方法もその一つなのですが、とくに次のような方に効果が期待できます。
・お腹に皮下脂肪が多い
・座っているのは大丈夫だが、立つと腰や脚に痛みやしびれがおこる
もしあなたがこのような条件で痛みやしびれにお悩みでしたら、この記事が役に立つかもしれません。
また皮下脂肪の少ないやせ形の方にも、原理的には効果が期待できますので、ぜひ試していただきたいと思います。
やり方は超簡単!
お腹の脂肪や皮膚を両手でつかみ、持ち上げる、それだけです!
上の写真は、実際に腰痛トレーニング研究所の患者さんがおこなっている様子です。
このように、お腹の脂肪をつかみ、上にしっかり引き上げてください。
こちらの患者さんは、歩く時に身体がとても重く感じ、やや腰に痛みがあるのですが、こうすると身体の重さや痛みをあまり感じず、軽快に歩くことができます。
また他の患者さんでは、立つと冷や汗が出るくらいの脚の激痛やしびれが消える、などの効果がみられています。
なぜお腹の脂肪を引き上げるだけで痛みが消えるのか?
それは、腰の負担が減るからです。
それだけお腹の脂肪の重みが腰の負担になっているのか!と思われるかもしれませんが、単純な重さだけの問題ではありません。
・身体の重心のバランス
・体幹インナーマッスルなどの筋力
・骨盤や背骨の角度
など様々な要因があります。
腹部の皮下脂肪と腰痛の関係を図解で解説すると、以下のようなメカニズムになります。
上の図の左が正常な腰(背骨と骨盤)のバランス。右が皮下脂肪が多い場合によく見られる、腰痛を起こしやすい腰のバランスです。
皮下脂肪が多いと、その重みの分身体の重心が前にいきます。
その際にインナーマッスルなど体幹の筋群がしっかりしていれば問題はないのですが、これらの筋力が弱いと骨盤や背骨を適正な位置、角度で支えられなくなります。
そうすると多くの場合骨盤が前に傾き(前傾)、腰椎が前弯して腰が反りやすくなります。
そのため腰の筋肉や関節に負担がかかり、痛みがおこります。
このような状態の時に、手で皮下脂肪を引き上げると、これと逆のメカニズムで骨盤や背骨が正常なポジションに近づき、腰の負担が減ります。
その結果、痛みやしびれが楽になるのです。
脂肪を手で持ち上げずに痛みを消す方法とは
この方法で効果があったとしても、ずっとお腹の脂肪を手でつかんだままで過ごすわけにはいきませんよね?
何か良い方法はないのでしょうか?
例えば、腰痛ベルトやコルセットなどで支えるというのも一つの方法です。しかし、人によってはあまり効果がなかったり、ずっと使っていると筋力低下を招いてしまったりというリスクもあります。
でも大丈夫!他にも良い方法があります。
先ほどの『腹部の皮下脂肪と腰痛の関係』のメカニズムを見直してみてください。
「インナーマッスルなど体幹の筋群がしっかりしていれば問題はないのですが、これらの筋力が弱いと骨盤や背骨を適正な位置、角度で支えられなくなります」と説明しました。
逆に言えば、「インナーマッスルなど体幹の筋力が強ければ、骨盤や背骨を適正な角度で支えられ、腰の負担を減らすことができる」のです。
そう、体幹インナーマッスルのトレーニングが、腰痛を改善するもっとも良い方法だと、筆者はおすすめしています。
体幹インナーマッスルの効果的なトレーニング
本連載でも何度もご紹介していますが、腰痛トレーニング研究所で指導している体幹インナーマッスルの基本的なトレーニングをご紹介します。
このトレーニングをおこなうことで、腹横筋、骨盤底筋、多裂筋など体幹インナーマッスルを回復することができます。
これらの体幹インナーマッスルは、腹圧を高め、背骨や骨盤を身体の内側から支える働きがあります。
またそれにともなって骨盤や背骨の位置や角度を適正に保つ力が回復し、腰の筋肉や関節の負担を減らすことができます。
まずは腹式呼吸を使いながらインナーマッスルに力を入れる練習をしていきます。
それでは、動画や画像を参考にやってみましょう。
自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより
『腹式呼吸を使った基本トレーニング』
※動画では専用のポールに乗っておこなっていますが、床に寝たままおこなっても同じような効果があります。
1.床にあおむけになり両膝を立てた姿勢をとる。
2.腹式呼吸の要領で、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口をすぼめて天井に息を吹きかけるようにしっかりと吐き切る。
3.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締める
4.息を吐きながら下腹部と肛門(骨盤底筋)を締め、恥骨を引き上げて腰を丸め、床に押し付ける。
5.このトレーニングを1日30回を目標におこなってみましょう。
いっぺんに30回でも構いませんし、10回ずつ朝昼晩のように分けても構いません。
トータルで30回が目安です。
30回以上できるようなら、やればやるほど効果は出ます。
しかし、動画内でも注意があるように、腰や背中、脚などに余計な力みがあると、かえって痛みを起こすことがありますので、その点はご注意ください。
このトレーニングをおこなうことで痛みが出たり、または痛みのためにこのトレーニング自体ができないようでしたらやめてください。
また、以下の記事で様々な腰痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
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文・指導/川口陽海
厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616
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