取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「家族でも常に一緒にいることはない。今別々に暮らしている両親を見て、心からそう思います」と語るのは、亜由美さん(仮名・37歳)。彼女は現在、東京の企業でマネジメントの仕事をしています。少し声が大きく、身振り手振りを交えながら話すところなどから、社交的で感情表現が豊かな様が見て取れました。
小さい頃の父親の記憶は皆無。週末も一緒に遊んでくれることはなかった
亜由美さんは兵庫県出身で、両親との3人家族。実家は大きな平屋の一軒家で、父方の親戚も車で数分の距離のところに集中していたと言います。
「そこまで親戚づきあいがあるわけではなかったけど、父親には3歳年下の妹がいて、父より4つ下の母親と年が近くて仲良しだったのか、よく家に遊びに来ていた記憶が残っています。叔母さんは結婚していたけどずっと子供がいなくて、私のことをすごく可愛がってくれました。祖父母よりも叔母は欲しいものをなんでも買ってくれていました」
亜由美さんの小さい頃の話を聞く中、少しも父親の話が出てきません。それほどに父親の印象が残っていないそう。
「小学生の頃ぐらいまでは私が起きているまでに帰ってきた記憶がなくて。夜中に目が覚めた時に話し声が薄っすらと聞こえてくるくらいでした。休みの日も一緒に遊んでいた思い出がまったくないんです。家族旅行も、母親と叔母さんと3人で行っていましたから。
当時父親は商社のサラリーマンだったんですが、よく海外の出張にも行っていました。どこへ行っていたのかは覚えていませんが、海外のレザーでできたキーホルダーなどをお土産にもらっていて、それをランドセルにつけていましたね。キーホルダーは魚のモチーフが多くて、ちっともかわいくなかったので、あんまり喜んでいなかったそうです(苦笑)」
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