取材・文/池田充枝
和装離れが進む現代においても、ファンを増やしているのが夏の涼衣、ゆかたです。花火見物や夏祭りに出かける若い男女のゆかた姿は目を楽しませてくれます。
「ゆかた」の語源は「湯帷子(ゆかたびら)」で、「湯」に用いる「帷子(裏のない着物)」からきています。江戸時代に入浴後のくつろぎ着として着られるようになり、やがて夏の気軽な外出着として定着しました。素材も麻から木綿へと変化するなかで、「型染」や「絞り」など染の技法が発達し、ゆかた独自の「いき」な図案が誕生しました。
夏の風物詩、ゆかたの歴史を江戸時代のゆかたや浮世絵、明治・大正・昭和時代のゆかたなどで紹介する展覧会が開かれています。(7月7日まで)
本展の見どころを、泉屋博古館分館の学芸員、森下愛子さんにうかがいました。
「江戸時代、町風呂(銭湯)が多く出現するようになると、ゆかたは風呂屋の二階などで涼みながらくつろぐための部屋着的な役割も果たすようになり、リラックスした場にふさわしい、楽しくおおらかな模様が表されるようになりました。
汗ばむ季節である夏が入浴後の状態に近いことから、夏季には銭湯への往復にも着られるようになります。その後、ゆかたの用途は盆踊りや花火見物、蛍狩りその他の行楽へと広がっていき、江戸時代後期には現在のような多様な用いられ方がなされるようになります。
明治時代から大正時代のゆかたは、江戸時代の伝統的な意匠が継承されますが、大正末期から昭和の前半にかけて、大胆な意匠がゆかたのデザインに多く見られるようになります。
その背景には、欧米におけるデザインの潮流がアール・デコと呼ばれる新しい意匠形式へと変化したことが挙げられ、大正時代末期頃からゆかたをはじめ着物にも、斬新で近代的なアール・デコ模様のデザインが多く見られるようになり、モダニズムを強く感じさせます。
本展では、江戸時代のゆかたから、鏑木清方など近代の画家がデザインしたゆかた、モダンなゆかた、昭和の人間国宝(重要無形文化財保持者)のゆかたなど、様々な作品をご紹介するとともに、染めに使われる型紙や当時の風俗を描く浮世絵など、素朴でありながら繊細さを兼ね備えたゆかたの魅力を、デザイン性と遊びの要素から紐解きます」
この夏はゆかたでも着るか!!、と思わせる展覧会です。涼しさを楽しみにぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
特別展 ゆかた 浴衣 YUKATA すずしさのデザイン、いまむかし
会期:2019年5月28日(火)~7月7日(日)
前期:5月28日(火)~6月16日(日)後期:6月18日(火)~7月7日(日)
(前後期で大幅な展示替えあり)
会場:泉屋博古館分館
住所:東京都港区六本木1-5-1
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
https://www.sen-oku.or.jp/tokyo
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日
取材・文/池田充枝