源義経の従臣・武蔵坊弁慶
武蔵坊弁慶(?~1189)は鎌倉時代初期の僧侶で源義経の従臣である。
剛力の荒法師として知られ、死してなお立ちつくし、義経を守ったという「弁慶の立ち往生」は特に有名だ。
弁慶は、母の腹にあること1年8か月、生まれたときには歯が全部生えそろい、髪が肩まで伸びていたという。
正善院・黄金堂に保管されている「弁慶の粕鍋」
誕生当初からあまたの伝説に彩られた人物だけに、全国には弁慶ゆかりの旧跡や遺品が多く伝わっている。山形県鶴岡市にある正善院の黄金堂には、「弁慶の粕鍋」と呼ばれる大きな鉄鍋が置かれている。この鍋で弁慶が粕汁を作り、ひと息に飲みほしたといわれる。
もちろん伝説の域を出ないものだが、粕汁とは、だし汁に酒粕を溶いた汁で、味噌を入れることもある。具は大根やにんじんなどの根菜、魚あるいは肉がよく用いられる。
酒粕はたんぱく質、炭水化物、ビタミンが豊富で、アルコールも少量だが含まれており、身体がほかほかとあたたまる。鶴岡は鮭がよく獲れるので、弁慶は鮭を具に使った粕汁を飲んだのかもしれない。大男にふさわしい、栄養たっぷりの冬の味覚といえる。
文/内田和浩